* 短編小説 *
□ * ヤキモチ *
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呼びかけたきり、なかなか続きを言わない日番谷に、市丸は書類を繰る手を止めて顔を上げた。
誰かの前では、日番谷さんか十番隊長さん。
二人だけの時には、冬。
そう使い分ける市丸に、日番谷はほっとするような寂しいような気分になる。
恥ずかしがる自分の為に、そうしてくれているのは解ってるけど…。
時々寂しいって思うのは、子供なのかな。
「…なんでもねぇ」
「変な子やねぇ」
目を逸らした日番谷に、市丸は首を傾げて苦笑する。
自分の思うときに優しくして欲しいとか、気持ちを表現して欲しいとか、こんな我儘、
「俺らしくねぇな」
最後の一言が口をついてしまった。
今度は吉良までもが顔を上げ、日番谷を見つめている。
四つの目に見られて(そのうち一対はどこを見ているのか判別しがたいけれど)、居心地が悪くなった日番谷は、逃げるように立ち上がった。
「……邪魔をしたな」
小さく告げれば、優しい声が背中から。
「冬。……もう少しやから、待っててな」
今にも瞬歩で消え去ろうとしていた日番谷は、真っ赤になって頷いた。
そんな平和な、昼下がり
→アトガキ
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