* 短編小説 *
□ * ヤキモチ *
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「あ、イヅル。ここ間違っとるで」
「え。…本当だ。すみません!」
市丸の持つ書類を覗きこみ、吉良は細い指先が指し示す位置を確認した。
ありえないケアレスミスに恐縮し、謝罪と共に書類を受け取ると、副官机に戻り筆を取る。
それをソファから眺めていた日番谷は、気がつけば声を掛けていた。
「…なぁ、市丸」
「ん〜?」
別の書類を眺めながら、顔を上げることなく市丸は先を促す。
ここは三番隊執務室。
光風清々しく、温光まろやかな…言うなれば、眠気を誘う昼下がり。
事務処理能力が高い十番隊は、早々に手持ちの書類を片付け、のんびりとした午後のひと時を送っていた。
副隊長の松本は、執務室のソファに寝そべり、煎餅片手に雑誌を読みながら、お留守番。
隊長の日番谷は、書類を届けるついでに、三番隊の執務室で和菓子など頂いていた。
それに対し、三番隊を取り仕切る隊長、副隊長は、先日の現世任務の報告書をまとめている。
(冬がおるうちに早ぅ終わらせて、思う存分いちゃいちゃしたる!)
と、やる気十分な市丸と、
(どうせこの後日番谷隊長を攫って逃げるんだろうなぁ)
と、溜息混じりな吉良
何はともあれ平和な日常。
「どしたん?日番谷さん」
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