* 頂きもの 小説 *
□ * それはきっともう少し先 *
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「隊長ったら!」
「ああ、わかったわかった」
今朝の定例会で渡された案件に難しい顔をしていると部下が何度目かの進言をしてきた。
進言、と言っても仕事に関することじゃなく、つい漏らした俺のひとことが引き金になったらしい。
「さっきからそればっかり!心配してるんですからたまには言うこと聞いてくださいっ」
「俺もお前に毎日同じこと言ってるんだがな?松本」
「それとこれとは話が別ですっ!さあさあ、早く行ってエネルギー補給してきてください!」
言うなり手にした書類も筆も取り上げられて部屋から押し出された。
顔色をうかがってきた松本に朝飯を食い損ねた、と口が滑って現在昼飯の時間帯。
いつもなら混雑を避けるために少し遅い時間に食堂に向かっていた俺は気乗りしないまましかたなく廊下を歩いた。
もともと仕事にやる気をみせない部下が隙あらばいなくなるせいで仕事が押しているのをわかっているのだろうか。
はあ、とため息をつくとまた足を進ませた。
が、食堂に入ってすぐに見つけた霊圧で少しだけ気持ちがたかぶる。
探ってみれば部下を連れての昼飯だったようで、奥のそば待ちの列に金色の髪を見つけた。
そのふたつ隣の配膳口では係があくびをかみ殺している。
少しだけ考えてその前に立つと、注文する。
ほどなく差し出された膳を手にすると、変な格好で机に突っ伏した男に近づいた。
なにやら一般隊士がひけ腰になるくらいのおかしなオーラを出しながらブツブツ言っているようだ。
「………………いや、ちょぉアカンてそれは」
「何がだ?」
「ひ、ひひひ日番谷サンっ!?」
聞いた途端、バネのように起き上がった市丸の顔が見上げてくる。
「い、いや何でもないんよ?さっきのは……そう、虚がこう来たらああ返そうか、いやそれやとアカンよな〜〜、みたいな?」
「…お前、何時からそんな研究熱心になったんだよ」
おかしなやつ、と思った。
そんなおかしなやつが気になっている俺も充分おかしいんだろうけど。
「…なんだよ」
飯は温かいうちに食うに限る。
そう自負していたから手を合わせてさっさと食べ始めたところに市丸の視線を感じて茶碗を持ったまま向かいを見てやる。
「堪忍。美味しそうに食べはるなぁ思て」
「食事は感謝して食うもんなんだから当たり前だろ。つうか、メシぐらい自分で取って来いよ」
しまった、と思った。
つい、睨みつけるような目つきになっていたのだろうか。
しかも素直じゃない俺の口は言わなくてもいい憎まれ口まで叩いてしまう。
(こんなんじゃ気持ちを伝えるなんて夢のまた夢だな)
自分の性格はわかっちゃいる。
思ったことと反対の言葉しか言えないことも。
それで誤解されやすいことも。
なんとか平静を装って飯を詰め込み終わると、立ち上がる。
「邪魔したな」
「…そらええけど、キミ、もうちょいゆっくり食べな消化に悪いで?」
「忙しいんだよ、俺は!」
引き止めるようなことを言い出す市丸に八つ当たり気味な言い方をして、また苦い気分になる。
(…くそ、)
背中を向けて少しだけ足を止めて。
「でも、松本は…相変わらずだ」
え、と聞き返してきた声を置いて足早にそこから立ち去った。
仕事も山ほどたまってて、うんざりするくらいに忙しくて、部下は仕事しやがらねえし、俺の調子は狂いっぱなしだ。
でも、いつも顔を見せるアイツが来ねえのはもっと調子が狂う。
「…ばかやろ、これで精一杯だ、」
だからってすぐに素直になれるわけなんてない。
小さくため息をつくと、きっとサボっているだろう部下の元へと足を踏み出した。
***
日番谷さんは自覚あり、と聞いてうっかり日番谷さんサイドを書いてしまいましたごめんなさい(>_<)
とんでもございません!男前な日番谷さんにきゃあきゃしましたv
こちらこそ転載ありがとうございましたー!^^*
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