* いろいろ *

□ * 50-50 *
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「さって、仕事仕事!コレ届けに行かないといけないから、もう行くわ」

積み上がった書類を抱えて、乱菊は独り言のように声を上げる。


「はーい、いってらっしゃーい。…せや、乱菊。日番谷さんはいつ頃戻るん?」

「…そろそろだと思うから、留守番してて」

おおきに、と言ってひらひらと手を振り、いっそ気持ち良い程のつれなさで、ギンは笑う。




解ってる。これはアイツなりの優しさ。

付き合ってるコと別れたあとは、いつもこうやって冷たく接してた。


だけど馬鹿にしてる。あたしにこんなのは必要ないのよ。



自分が情けなくて、悔しくて、乱菊は市丸を見ずに執務室から逃げ出した。





廊下を半分ほど進んでから、壁にもたれ掛かると、背中に伝わる硬く冷たい感触。

少し早まっていた動悸を抑えるために、そっと息を吐いて、そのまま軽く頭を預けた。


見上げた空が、やけに青い。




(アイツ、ただのサボりじゃなかったのね…)

十番隊に年中ギンが訪れるのは、サボるのに都合が良いからだと思っていた。


自分とギンがくだらない話で盛り上がって、それにイライラしながら隊長が書類を捌く。

時折隊長に怒鳴られて、自分は仕事に、ギンは三番隊に戻らされて。


そんな当たり前の日々。思いもしなかった真意。



でも、今日解った。隊長の顔を見たいから、十番隊に来ていたんだってことが。



感情を掴ませない男ではあるけれど、多少は解っているつもりだったのに。

何に対してもそつなくこなし、執着など持たなかったギンが、自分の知る限り初めて本気になった。

望まれるままに関係を持ち、何人も相手を替えてきたギンと、唯一切れなかったのは……自分だけ。


それは互いに執着しなかったから。


言えない言葉は永遠に胸の中。

でもそれで良かったの。





だからいつまでも一緒にいられる。




「さっさと……、まとまっちゃいなさいよ」



ぽつん、と呟いて、弾かれたように勢いよく歩き出す。


ギンが来る度に、隊長が少しだけ嬉しそうな顔をすることを、自分は知っている。

それに見て見ぬフリをしていたのは……、事実。



でも、どちらも大切な人だから。





今夜は思い切り騒いで。思い切り酔って。

そして明日からまた笑おう。


そう決めて、いつもより重い書類を、抱えなおした。





→ アトガキ

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