novel
□俺を見て(仁海)
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「雅治さんったら,またそんな格好なんかして・・・」
「えーじゃろ別に。俺の勝手ぜよ」
姉ちゃんの何時も通りの言葉に適当に返事をして玄関へと向かう。
「いって来る」
俺を見て
「あら,比呂士君こんにちは」
日課の様に声を掛けてくる近所のおばさん。
「こんにちは。今日もいい天気ですね」
「比呂士君はお散歩?」
「えぇ,気分転換に近所を歩こうかと・・・」
「まぁ,そうなの。それじゃぁ,足止めさせてしまってスミマセンね」
「いえ,そんな事は・・・それでは」
そう言っておばさんに背を向ける。
「まったく,良く出来た子ねぇ♪」
後ろからはそんな声が飛んで来る。
・・・俺ん事,すっかり柳生と思っちょる。
それにあのおばさん,「私があと30も若ければねぇ・・・」なんて頬染めちょるわ。
・・・っまったく,これじゃけん柳生の変装はやめられんのぅ。
俺,仁王 雅治は、同じ学校の柳生比呂士の変装して散歩するのが趣味。
『コート上の詐欺師』なんて通り名なんかもある。
まぁ,とにかく人を騙したりするのが好き。
そうやってぶらぶら歩いていると,思い掛けない人物から声を掛けられた。
「・・・柳生さん・・・」
振り向くと,思わず我が目を疑ってしまう。
・・・青学の・・・海堂・・・?
なんで海堂が?
「柳生さんですよね?久し振りっス」
そんな俺の様子にも関わらず,海堂はペコリと頭を下げて近付いて来る。
「・・・あぁ,久し振りです。海堂君」
柳生の奴,何時の間にこんなに海堂と仲良くなったんじゃ!?
確かに柳生からABCオープンで海堂に会ったとは聞いちょったけど。
これ程の仲とは・・・。
「あの・・・柳生さん,折角ですからそこら辺で話でもして行きませんか・・・?」
・・・話?折角じゃけど,話等していると,ボロが出るかもしれんし・・・。
けど,折角の海堂からの誘いじゃし・・・。
実は,前々から海堂の事が気になっていた。
人を寄せ付けないオーラを出しながらも,時折見せる,あの寂しげな瞳・・・。
少し甘えて来るので,こっちがその気になると,手の平返される。
・・・まるで猫みたいじゃのぅ。
何となくほっておけない感じがする。
そんな海堂から誘われたんじゃけん・・・。
断る訳がないっ!!!
「えぇ,有り難くお受けします」
海堂とデートじゃっ♪
* * * * *