novel

□視線の先の彼奴(桃海)
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何故俺は彼奴を目で追ってしまうんだ。

そして目が合ってしまうと急激に目を逸らしてしまう。

そして何時も目を逸らした後は胸の高鳴りが止まらない。

何故だ。

彼奴を見ると何時も・・・。



視線の先の彼奴



「・・・おい馬鹿城。何ジロジロ見てやがる」

いきなり声を掛けられ驚く。

「ふぇ?何が?」

「何がじゃねぇ。さっきからずっとジロジロ俺の方見てただろうが」

・・・どうやら俺は無意識の内に此奴の事を見ていた様だ。

「そうか?無意識だったから気付かなかった」

「何が無意識だ。鬱陶しい」

「しょうがねぇじゃん。俺の視界に居るてめぇが悪ぃ」

ついまた此奴の怒りを買う様な言葉を言ってしまう。

「何だと?てめぇ、やる気か?」

「上等だゼ」

そして何時も通り、喧嘩の始まり。

互いの胸倉を掴み合う。

すると何時も通り大石先輩辺りが止めに入る筈。

「コラッ!海堂も桃もやめろっ!!」

ほら、やっぱり大石先輩が止めに入った。

でも、まだやめらんねぇよな。



するとそこで期待していた声が飛ぶ。

「桃城、海堂っ、グラウンド20周だっ!!」

「「・・・はい・・・」」

そして何時も通りの部長の声で俺達は走り出す。

これが何時もの青学の日常風景。

「・・・ったく、てめぇの性だ」

「それはこっちの台詞だ」

「「・・・・・」」



「「何だとっ!!?」」





* * * * *





「あ〜あぁ、桃達またやってる。よく毎日同じ様な事で喧嘩出来るよね〜」

「そうだね、英二。でもあれって喧嘩って言うより、じゃれあってるんじゃないかなぁ?」

「確かに・・・全く、桃も素直じゃないし、薫ちゃんも鈍いからにゃ〜」

「でも、そろそろ手塚の声が飛ぶね」



「桃城、海堂、30周だっ!!」



「ホラね」





* * * * *





俺達はやっとの事で走り終わると、クタクタの体を引き摺って部室のベンチへと倒れこむ。

流石に俺達が走り終わる頃にはもうみんなとっくに帰ってしまっていて、部室の中は俺と海堂の二人。

あまりの疲労に俺も彼奴もゼハゼハと荒く呼吸している。

そんな中で彼奴は日頃から自主トレしてるだけあって俺よりも早くその場から立ち上がった。




こういう時に此奴との差を見せ付けられるのは悔しい。




どうせ此奴はこのまま直ぐに自主トレに言ってしまうのだから、こんな所でへたばってる俺なんかとは比べ物になんない様な練習をしてんだろうな。




・・・何だか、情けない。




チッと舌打ちをすると直ぐ様俺も立ち上がる。

しかし、立ち上がった途端、視界が揺れた。

海堂が斜めに見える。

ドサッと音がする。

あまりの疲労で倒れてしまったかと思い、咄嗟に自分の姿を見ると、違った。




海堂が自分に倒れ掛かってきたのだった。




「海堂っ!?」
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