novel

□有難う(真海)
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放課後。

大半の生徒は下校し,部活動の有る者だけがこの学園に居る。

俺はと言うと,これから遅れて部活に行くという所。

そして裏門の前を通り,テニスコートへと向かう途中。



有難う



「海堂君か?」

いきなりのその言葉に耳を疑う。

・・・俺?

その声の主に再び驚く。



『王者立海大』の副部長,真田 弦一郎。



・・・何であの真田さんが俺に!?

とにかく頭の中は?で一杯だった。

「・・・海堂は俺ですけど・・・」

ただ,混乱していても仕方がないので自分から名乗り出る。

「あぁ,やはり君か」

とりあえず裏門前に居られても困るのでテニスコートへと案内する。

今はどこの部も活動中で,活気だった雰囲気が漂っている。

「・・・あの・・・俺に何か用ですか?」

黙っていても仕方がないと思い,自分から話を切り出す。

「あぁ,今日は君に礼を言いに来た」

「・・・ハァ。そうですか・・・」

・・・礼?何の事だ?全く身に覚えがない。

「あの・・・礼って何の事ですか?」

「あぁ,先日,ABCオープンで君が幸村への侮辱を制裁してくれたと柳生から聞いてな」

・・・ABCオープン・・・。



・・・あぁ,あの時か。



確かに自分はつい先日ABCオープンへ行き,立海大の部長,幸村さんへの侮辱を聞き,つい相手へと拳を奮ってしまったのだった。

「あっ・・・あの時は俺,ついカッとなって・・・」

「いや,ただ君のその信念に礼を言いに来たのだ」

真田さんが真顔で『信念』なんて言葉を口にするから,つい頬が赤らんでしまう。

「・・・有難う御座います」

「それは俺の言葉だ。君が口にする言葉ではない」

「っあ・・・ハイ・・・」

どうも調子が狂う。

「・・・それで礼をしたいのだが,この後俺の家に来てくれないか?」

・・・家?・・・真田さんの?

「え・・・真田さん家ですか・・・?」

「あぁ,そうだが何か都合でも有るか?」

「あっ,別にそういう訳じゃ・・・ないっスけど・・・」

いきなり俺の家に来てくれと言われ,驚かない人の方が不思議だ。

「そうか。なら君の部活が終わるまで校門の前で待たせて貰う」

「え!?・・・真田さんを待たせる訳には・・・」

「何を言う。此方が礼を言う側なのだから,待たされて当然だろう」

そう言って俺の止める間もなく真田さんは校門へと向かって行ってしまった。



「・・・マジかよ・・・」





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