novel
□始まりはこの手に(亜海)
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始まりはこの手に
学校帰り,特別コレといった用も無いがただそのまま家に帰るのも気乗りせず,俺はブラブラと住宅街を闊歩していた。
道行く野郎に視線を伏せられたり指を指されるのにはもう慣れた。
こんな髪の色していれば当然だと,何処かのオレンジ頭が言ってたっけか・・・。
まぁそりゃそうだ。
こんな銀髪,他では中々拝めねぇだろうしな。
何気なく突っ込んだポケットを漁ると愛用のジッポが出て来る。
これまたどっかのチビに吸いすぎは良くないと規制されては居るが,そんな事は構わない。
俺は誰の指図も受けねぇ。
胸ポケットから残り2,3本となった煙草を取り出す。
最近はセブンスターを吸うのが定着して来ている。
そんな中から煙草を1本取り出し火を付ける。
軽く吸うと広がる,いつもの味。
煙草を銜え,左手はポケット。
これで亜久津仁の完成だ。
* * * * *
暫くそうやってブラついていると,何処かから聞き慣れた音が。
パコーン パコーン・・・
テニス・・・か?
音の所在を確かめ,ここからそう遠くない事を考えると,ここを150m程行った所の公園だろう。
暇つぶしに行ってみるのもまぁ良いだろ。
そう軽い気持ちで俺はその公園へと向かった。
* * * * *
着いてみると,其処には見覚えの有る顔が。
関東大会での対戦校,青学のレギュラーだ。
名前は知らない。
かなり印象的な瞳をしていたから辛うじて顔は覚えているが。
兎に角,何でも打ち込んでやる性格の様だ。
俺が入って来ても気付きもせず,ただ黙々と練習を続けている。
首もとは汗でビッショリだが,それもお構いなしでボールを追っている。
よく其処までテニス如きに必死になれんな・・・。
俺には分からねぇ。
「おい・・・そこのおまえ」
俺が呼ぶと,其奴はゆっくりと振り返る。
関東大会の時と同じ,印象的な,鋭い瞳。
「・・・何だ」
「おまえ,青学だな。名前なんてんだ?」
「・・・海堂・・・薫」
ケッ,これまた印象的な名前じゃねぇの?
“薫”なんてよぉ。
「俺の事は分かるか?」
「あんた山吹の・・・亜久津さん・・・?」
知ってんのか。
まぁあんな試合やっといて知るなという方が無理が有るがな。
「おまえ・・・何でんなテニスに必死になれんだ?」
「・・・あんたには関係ねぇ」
「ハッ,所詮雑魚って事か。練習でもしねぇとまともに試合も出来ねぇ雑魚って事か」
「・・・黙れ・・・」
またそんな鋭い瞳で睨んで来やがる。
唇に歯を立て,必死に怒りを抑えている姿を見ると,何だか・・・。
ブチ壊したくなる。
此奴の全てをグチャグチャに・・・俺の手で壊したくなる。
「・・・あんたは練習なんてしなくても出来るかも知れねぇ・・・けど,俺は・・・」
もうそんな事知った事じゃねぇ。
決めた,此奴を壊す。
俺の全てで。