novel

□花を摘む音(リョ海)
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あの人はいつもそうだ。

ゆっくりだけど,確実に。

強引なまでに現れては,俺の大事な花を摘んでいく。

まるで侵略するかの如く。



花を摘む音



午後4時。

いつも通りの練習風景。

直ぐ近くのCコートでは河村先輩と菊丸先輩が打ち合っているのが見える。

その隣りのBコートには部長と乾先輩。

そしてここから一番離れたコート,Aコートには俺の,



大事な大事な,“花”が居る。



今日も汗だくになりながらも,必死に黄色いボールを追って居る。

綺麗・・・だな。

思わず見惚れてしまう。

透き通る様な白い肌に,サラサラと揺れる黒い髪。

この人は何故ここまで俺を狂わすんだろう。

何処かに閉じこめ,俺だけの・・・ただ,俺だけの物にしてしまいたい・・・。

そんな欲望がフツフツと沸き起こる。

他の奴に触れさせたく無い。

俺だけの・・・物に。

これを独占欲と言うんだろうか。

・・・けど,俺はそれが叶わないのを知っている。

ホラ,あの人だ。

たった今だって“花”の中に居る,あの人。



桃先輩。



俺は,色んな意味でこの人には敵わない。

色んな意味で。

俺は知ってるよ?

“花”の心が誰に在るか。

だから,あの人に摘まれる事が,“花”も望んでいる事だって。

分かってる。

けど,分かってるからって認めたく無いじゃん?

俺は引き下がりたくは無い。

例え“花”の心が,俺じゃない,誰に在ったって・・・。



俺は,“花”を諦めない。



そう思うのは,自由だよね?

届かなくたって,無理だと分かってたって。



“花”を好きだって気持ちは。



「・・・ね,海堂先輩」





End

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初のリョ海がこんな内容・・・。嘆いた方が良いんでショウかね?

リョ海というより桃海←リョって感じが強いデスがね。詩的なイメージで作ったんで。

王子にとって薫ちゃんは”花”なんデスよ。

まァ今回の話はその中の”独占欲”がテーマみたいな。・・・って何偉そうな事言ってんだ。

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