novel

□アゲハ蝶(桃海)
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ヒラリリラリと舞い遊ぶ様に姿見せたアゲハ蝶

夏の夜の真ん中月の下

喜びとしてのイエロー憂いを帯びたブルーに

世の果てに似ている漆黒の羽



アゲハ蝶



空に黄色い球が打ち上がる。

「おっ、ロブだ」

「行け、桃いつもの!」

フッと宙に体を浮かせると感じる。

風の動き。

「おうっ!」

「ダーンクスマッシュッッッ!!」





* * * * *





「・・・6−7・・・」

「イェーイッ、俺の勝ち!」

そう言うと此奴は「五月蝿い」と俺の背中を小突いてくる。

「・・・大体、あそこでロブが上がらなければ俺の勝ちだった」

「な〜に?薫ちゃん、負け惜しみ?」

「・・・チッ・・・うるせぇ・・・」

拗ねたかの様にそっぽを向いてしまう。

ありゃりゃ、拗ねちゃった☆

「・・・でも約束は約束。覚えてるダロ?約束の一回♪」

俺がそうにんまり笑って言うと、海堂は顔を真っ赤に染める。

「っ///・・・くそっ」

そう言うと木陰へ行き、誰も居ないのを確認すると俺の頬を両手で包み込む。

そしてチュッと触れるだけの口付け。

「///っ、これで良いんだろっ!」

「んっ、桃ちゃん満足♪」

「自分の事をちゃん付けすんじゃねぇ気持ち悪ぃ」

最後に捨て台詞を残すと、海堂は次の試合の為、英二先輩の待つコートの方へと向かって行った。

「・・・ったく、可愛いなぁ♪」

「そうっスよね。直ぐ真っ赤になる所なんか・・・」

「そうそう。あとあの口元なんかなぁ・・・」

「犯罪的っスよね」

「うんうん・・・って、越前っ!?」

いきなりの後輩の出現に我を忘れて驚く。

「まっ、まさか今の見て・・・」

「えぇ、バッチリっスよ」

「///!!」

思わず口をパクパクと動かしながら固まってしまう。

「全く、桃先輩も海堂先輩も甘いなぁ」

「うっ、うるせぇなぁっ///」

「ったく、そんな風に鼻の下伸ばして余裕かましてたら俺、海堂先輩の事取っちゃうよ?」

何て奴だ。

こんなに意図も簡単に宣戦布告かましやがって、この『生意気なルーキー』がっ!!

「・・・おまえ・・・まだ海堂の事諦めてなかったのか?」

「当然。俺と海堂先輩の出逢いは運命的だったから。だからきっと俺の運命の相手なんスよ」

「・・・運命って・・・」

アメリカ帰りの帰国子女も、案外可愛い夢を描いてるもんだ。

・・・って言ったって越前曰く、その”運命の相手”は俺の恋人なんですけど。

「・・・けど、出逢いって・・・どんな、だったんだよ・・・」

「気になるんスか?」

気にならないと言ったら嘘だ。

「・・・俺と海堂先輩の出逢いはまるでドラマの様な出逢いだったっスよ」

「・・・・・」

「俺が初めてここ、青学で試合した相手って桃先輩だったよね?」

「ん?あぁ、確かにそうだな〜」

「そしてその日俺は、いくら桃先輩との試合と言えども流石に多少の疲労はあって、帰り道、途中で意識が途切れかけたっス」

「ほぉ・・・」

”桃先輩と言えども”・・・ねぇ・・・。

「そして意識が朦朧とした瞬間、誰かにぶつかったんだ。それが・・・」

急に顔を赤く染め、越前は黙りこくってしまった。

「それが?」
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