novel
□アゲハ蝶(桃海)
1ページ/4ページ
ヒラリリラリと舞い遊ぶ様に姿見せたアゲハ蝶
夏の夜の真ん中月の下
喜びとしてのイエロー憂いを帯びたブルーに
世の果てに似ている漆黒の羽
アゲハ蝶
空に黄色い球が打ち上がる。
「おっ、ロブだ」
「行け、桃いつもの!」
フッと宙に体を浮かせると感じる。
風の動き。
「おうっ!」
「ダーンクスマッシュッッッ!!」
* * * * *
「・・・6−7・・・」
「イェーイッ、俺の勝ち!」
そう言うと此奴は「五月蝿い」と俺の背中を小突いてくる。
「・・・大体、あそこでロブが上がらなければ俺の勝ちだった」
「な〜に?薫ちゃん、負け惜しみ?」
「・・・チッ・・・うるせぇ・・・」
拗ねたかの様にそっぽを向いてしまう。
ありゃりゃ、拗ねちゃった☆
「・・・でも約束は約束。覚えてるダロ?約束の一回♪」
俺がそうにんまり笑って言うと、海堂は顔を真っ赤に染める。
「っ///・・・くそっ」
そう言うと木陰へ行き、誰も居ないのを確認すると俺の頬を両手で包み込む。
そしてチュッと触れるだけの口付け。
「///っ、これで良いんだろっ!」
「んっ、桃ちゃん満足♪」
「自分の事をちゃん付けすんじゃねぇ気持ち悪ぃ」
最後に捨て台詞を残すと、海堂は次の試合の為、英二先輩の待つコートの方へと向かって行った。
「・・・ったく、可愛いなぁ♪」
「そうっスよね。直ぐ真っ赤になる所なんか・・・」
「そうそう。あとあの口元なんかなぁ・・・」
「犯罪的っスよね」
「うんうん・・・って、越前っ!?」
いきなりの後輩の出現に我を忘れて驚く。
「まっ、まさか今の見て・・・」
「えぇ、バッチリっスよ」
「///!!」
思わず口をパクパクと動かしながら固まってしまう。
「全く、桃先輩も海堂先輩も甘いなぁ」
「うっ、うるせぇなぁっ///」
「ったく、そんな風に鼻の下伸ばして余裕かましてたら俺、海堂先輩の事取っちゃうよ?」
何て奴だ。
こんなに意図も簡単に宣戦布告かましやがって、この『生意気なルーキー』がっ!!
「・・・おまえ・・・まだ海堂の事諦めてなかったのか?」
「当然。俺と海堂先輩の出逢いは運命的だったから。だからきっと俺の運命の相手なんスよ」
「・・・運命って・・・」
アメリカ帰りの帰国子女も、案外可愛い夢を描いてるもんだ。
・・・って言ったって越前曰く、その”運命の相手”は俺の恋人なんですけど。
「・・・けど、出逢いって・・・どんな、だったんだよ・・・」
「気になるんスか?」
気にならないと言ったら嘘だ。
「・・・俺と海堂先輩の出逢いはまるでドラマの様な出逢いだったっスよ」
「・・・・・」
「俺が初めてここ、青学で試合した相手って桃先輩だったよね?」
「ん?あぁ、確かにそうだな〜」
「そしてその日俺は、いくら桃先輩との試合と言えども流石に多少の疲労はあって、帰り道、途中で意識が途切れかけたっス」
「ほぉ・・・」
”桃先輩と言えども”・・・ねぇ・・・。
「そして意識が朦朧とした瞬間、誰かにぶつかったんだ。それが・・・」
急に顔を赤く染め、越前は黙りこくってしまった。
「それが?」