novel
□甘い薫りに包まれて(桃海)
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季節は春。
本州ではもう桜が咲き誇る季節。
・・・だと言うのに。
「ふえぇぇックシィッ!!」
先程からこうやって盛大にクシャミをかましている、俺、桃城武が居る。
甘い薫りに包まれて
「くっそぉ〜・・・マムシの奴。まだ来ねぇのかよ」
実は今日、青学テニス部レギュラー陣全員で珍しく花見といった粋な催しを行う。
その為俺と、同じく二年の海堂薫と場所取りの筈なんだが・・・。
「全ッ然彼奴来ねぇや・・・」
で、現在に至る。
いくら暖かくなったと言ったって、外で15分も待たされれば流石に体も冷えて来る。
「来やがったら絶ッてぇブッ飛ばす・・・!」
そんな決意を固め、俺はひたすら桜の木の元、一人で憎たらしい彼奴の事を待ち続けた。
* * * * *
「・・・もっ、20分経ってねぇか?」
腕時計を睨み付けながらついつい言葉が漏れる。
「っかぁーっ!ムカつくゼ。何で俺がマムシ野郎なんかを待たなきゃいけねーんだよ!?」
最終的にはマジ切れモード。
「ありえねーな、ありえねーよ」
ボリボリと頭を掻くと、その場にしゃがみ込む。
ったく、もし風邪でも引いたらどうしてくれる。
まぁ彼奴の事だから”馬鹿は風邪引かねぇ”とかって言うんだろうケド?
って何俺あんな野郎の思考呼んでんだぁっ!?
・・・けど、らしくねぇよな、彼奴にしては。
絶ッてぇ遅れて来る様なタイプじゃねぇしよぉ。
・・・何か・・・あったのか?
急に不安が胸を過ぎる。
そう言えば・・・そうだよな。
確か彼奴、今まで遅刻した事なんか無いだろうし・・・。
部活だっていつも誰よりも早く来てるくらいだよなぁ・・・。
・・・って何俺マムシの事なんか考えてんだぁっ!!?
ヤメだヤメっ!!
マムシなんて知らねぇっ!
・・・マムシ・・・なんて。
「ったく、遅いってぇの・・・」
大丈夫に決まってんだよ。
彼奴の事だから不良に絡まれたって逆に返り討ちにでもしてるだろうし。
誘拐なんて彼奴に限って絶対無い・・・。
絶対・・・?
「・・・っクソッ、心配じゃねぇか・・・」
* * * * *