novel
□この鼓動を僕は知らない。(塚海)
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振り返ると止まらない、この鼓動を僕は知らない
擦れ違った、あの時の胸の高鳴り。
今も忘れない。
少し先を歩む貴方は、俺にとって遥か遠くを歩く人だから。
近付きたくて、でも届かなくて。
何度も声を掛けようとした。
けれど、その言葉は全て自分の中に呑み込まれた。
言いそびれたその言葉は、唯々、俺の心の中で木霊した。
こんなに距離は近くても、貴方は遥か遠くに居るんだと思い知った。
貴方は遠くから、唯眺めるだけの存在だと。
唯、眺めるだけの・・・。
あの頃の俺は、唯貴方と擦れ違う、それだけで心が満たされた。
それだけで十分だった。
手の届かない存在、そんな貴方を眺める事が出来る。
擦れ違う事が出来る、それだけで・・・
貴方は笑うだろうか、こんな話をしたら。
一年前の俺はこんな事を思っていたと。
本当に、俺にとって貴方は憧れだったから。
それは今も変わらない物だけど・・・。
今は貴方とこうして、隣を歩いて居られる。
* * * * *
穏やかな日差しが差し込む。
その日差しが貴方を照らす。
本を捲る指の動きを、俺は静かに眺める。
この距離に、貴方が居る。
「どうした・・・海堂?」
視線に気付いたのか、貴方は本から俺へと視線を移す。
視線は緩やかに俺の心を突き抜ける。
「いえ・・・何でも無いっス、部長」
今は、貴方の隣を歩いて行きたい。
End
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珍しく海堂視点で。
非常に短いデス、もう意味の分からないくらい。(てか分かんねェよ!
まァ、有るじゃないデスか、『届かない存在』ってのは。恋愛感情にしても、憧れにしても。
それが海堂の場合では手塚なんデスよ。
「だからどうした」って感じの話デスね、ハイスイマセン。