刀剣乱舞
□一話 終わりと始まり
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『戻ってきて!!…っ!?』
ガバッ
自分の叫び声で飛び起きる。
全身汗が噴き出している。
手も額も汗でぐっちょりだ。
動悸も激しく、呼吸をするのもままならない。
「雫様…。」
傍らにはこんのすけが心配そうに座っていた。
「またあの時の夢ですか?」
『……』
あの後のことはあまり覚えていない。
気づいたら、こんのすけと共にこの屋敷にいた。
そんな事をぼんやりと考えていたら、
「あれから一年経ちます。それに、アレに遭遇したのは貴女様が初めてだったんですから、お気に病むことはないのですよ?」
確かに検非違使に遭遇したのは私が初めてらしい。
でも、それとこれとは話は別だ。
私は彼らを生かしてやれなかったのだ。
私の気を知ってか知らずか、こんのすけは話を続けた。
「審神者としてまた本丸を築く事は今の貴女様では難しいでしょうが、審神者の補佐、兼、女中として働くのはいかかでしょうか?」
何という提案をしてくるのだ、この管狐は…。
「実は、審神者として少々不安のある審神者がいまして…」
私の顔色を窺うように少しずつ話を進める。
「政府から是非とも雫様の才能を活かしたいとお申し出がありまして…」
『私に審神者としての才能は無いよ。本丸を落とされたんだ。才なんて…。それから、私に【様】は要らないんじゃない?もう、あなたの審神者ではないから…』
「……」
そう言えば、こんのすけは少し悲しい顔をした。
「では、言い方を変えましょう。今わたくしが受け持っている審神者様が少々下手くそなんですよ…。」
『何が?』
「刀剣男士の顕現です。できないわけではないのですが、どうしてか顕現が苦手みたいで…。」
『手をかざすだけじゃない』
そう、ただ手をかざすだけ。
それだけだ。
「雫様にとってはそれだけこ事でしょうけど、実は少し難しいのですよ?そこの才があるかどうかで審神者の候補が決まるのですから。」
初耳だ。
何がどう難しいのだろうか…。
ならば何故その彼を審神者にしたのだろうかと疑問にも思ったが、何時ぞやこんのすけが審神者不足と話してたことを思い出した。
ともあれ、このまま何もせずに過ごすのはホントはいけない事なんだよね。
気は乗らない。
刀剣男士をみれば、彼らを…私の本丸に居た彼らを思い出すから。
「いかがでしょか?」
こんのすけが返事の催促をする。
『本当は、政府の人間から私を働かせろ、ってお達しがきたんでしょ?』
ギクッっと音がしそうなほどに動きが不自然になった、こんのすけ。
図星か。
『わかった。こんのすけの頼みだしね』
「ほんとですか!?」
パァっと一気に表情が明るくなったこんのすけ。
「あ。でも、本当にダメだった場合は言ってくださいね?政府もそこまでは鬼ではないと思うので、できる範囲で大丈夫です!」
さっきとは打って変わって悲しい表情をする。
百面相ってこんなことを言うんだな…、なんてくだらないことを考えた。
『わかった。向こうの人に迷惑をかけるわけにはいかないからね』
「それでは早速参りましょうか?」
まさかと思ったが、やはり今日中に行くのか。
『支度するから待ってて』
私は重いからだを引きずる様に支度を始めた。