●花薊物語●

□花薊物語 番外編
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塾に戻ってパンパさんと別れた後、講師控室に僕は向かった。




―――どうせ、これだけびしょ濡れじゃあ歓迎されないのは目に見えてるけど






控室に入るなりなんなり、パディ先生あたりに


「うっわーびちょびちょなんだよー!!部屋に入らないでよー!!」



などと言われるに違いない。

追い出されるの覚悟で、僕は講師控室に入った。



結果は予想通りで。


「うっわーびちょびちょなんだよー!!こっち来ないでー!!」




・・・流石に部屋に入らないでよーはないか。


上に羽織っていた背広を脱いで、その場で絞る。

絞られて床に落ちた水が次第に小さな水溜りとなった。



「ちょ、あげたまご!!それあとでふいといてねー!!?」



パディ先生に叱られる。

それを半ば無視して、僕は自分の為に用意されているデスクについた。




「あ、ねえねえそういえばパディせんせ。」



先程のパンパさんのことが少しだけ気になって、僕は聞いてみた。



「そういえばパディ先生ってパンパさんのクラス持ってましたよね?」



パディは、自分のデスクに乗っているコーヒーに口をつけて頷いた。


「そーだよー?それがどうしたのー??」


「いえ、特に大したことではないですけど。優しい子だなぁって。」



「えーあげたまごってば・・・ロリコン?」



・・・パディ先生に何か誤解されてしまった。

いやいや!恋愛感情とかじゃないからさ!!!



「違いますって!!そんなんじゃなくて!!!此処の塾生にしてはまともだなって思っただけです!!」


パディ先生は、普段より2割増しぐらいニヤニヤして、


「どうだか〜?」


とからかって来た。



するとその途端に、普段ではあり得ない真面目な顔をして、


「あの子はちょっと過去に色々あってさ。」



と苦笑いとも同情とも掴めないような顔をした。



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