ygo!

□最後に残る希望すら見えない
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出会い頭に、殴られた。

吹っ飛んで打ち付けた身体を擦りながら、
十代は尻餅を付いた状態で、
白のライダースーツを着ている長身の男を見上げる。
ジャック・アトラスだった。遊星の仲間の、元キングの。
面倒そうに、気だるげにジャックを見上げる十代は、
何処か俗世間と離れているような目つきをしていた。
その所為か、実際にはジャックが見上げられているにも拘らず、
その瞳に上から見下げられているような錯覚に陥る。
態度も明らかに無気力で、さも面倒そうに立ち上がり、
パンパンと埃を落としている。
そんな十代の態度にジャックは怒りが募ったらしい。

「貴様の所為で、遊星は!」

そう言って、力任せに再度右腕を振り上げる。
だがそこで、隣で一時面食らっていたクロウが我に返り、
ジャックを羽交い絞めに…しようとしたが、如何せん身長が足りず、
上手く行かなかった。

「うわ、やめろジャック!」
「ええい離せクロウ!
オレはコイツをどれだけ殴ったところで殴り足りん!」

ジャックが怒り心頭といった体で暴れると、
小柄なクロウはいとも簡単に吹っ飛ばされてしまった。

「ってめジャック!止めろって言ってるだろ!」
「五月蝿い!コイツの所為で、遊星は…我慢ならん!」

ビシ、とジャックは右の人差し指を十代に突きつける。

「この1年、一体何処をほっつき歩いていたと言うのだ…!
遊星が居なくなってすぐに、貴様まで消息を絶った。
何の手がかりも無く、オレ達は手を拱いていたというのに…!
どれだけ、オレ達が遊星を追ったか…!
それすら、貴様は知らないだろうな!」
「……まぁな」

素っ気無い返事のその一言に、口より先に身体が動いた。
クロウが止めようとしたものの、少し遅かった。
バキッという音を立てて、ジャックは十代の腹に一発拳を叩き込む。
だが十代は、身体を折りはしたものの、堪えたような様子ではなく、
数瞬後には何食わぬ顔でジャックの前に立った。

「ふざけるのも大概にしろ、遊城十代!
オレ達はこの一年、必死で遊星の消息を追おうとした。
しかし捜索は難航し、オレ達は諦めかかっていた。
だがそこで、ごく最近、ついに遊星を見つけたのだ!」

ジャックは拳を握り締める。

「だが、見つけた時のヤツの反応を、お前は知る由も無いだろうな」

親の仇とでも言う様に、ジャックは十代を睨みつける。
その言葉に、十代は口を開く。

「『アンタは誰だ』…だろ?」

ジャックは少しばかり面食らった顔をしていたものの、
取り繕うようにして再度声を荒げる。

「そうだ。オレ達の事を、全て忘れていた。
貴様の所為だ遊城十代!
貴様の所為で遊星は…遊星は記憶を失った!」

ジャックは十代をきつく睨み、大声で怒鳴る。
そこに、クロウが慌てて仲裁に入ろうとする。

「何言ってんだよジャック!言いがかりも程ほどにしとけよ!」
「ええい、うるさいぞクロウ!
では何故遊星が行方不明になって、そして記憶を失ったのだ!
こいつに付き合わされていたからだろう!」
「けどソレは遊星が進んでやってた事だろ!?
オレ達にはどうしようもなかったし…」

そう言ってクロウは十代のほうへと向き直って口を開いた。

「すまねぇ、十代。変な言いがかりつけちまって悪かったな…
ちょっと、ジャックは気が動転しちまってるみたいでさ」
「…いや」

ゆる、と十代は首を横に振る。
だがジャックは俄然憤るように声を荒げてクロウに噛み付いた。
ジャックとクロウは睨みあう。双方譲らず。

「気が動転などしていない!
どう考えてもコイツの所為だろうが!
お前には分からないのかクロウ!」
「だからジャック、言いがかりはやめろって言って…!」




 
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