箱庭奪還計画

□壱
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俺は母上や父上のことを知らない。それは、俺が生まれてすぐに死んでしまったらしいので仕方が無い。

【らしい】というのは、当然のことだが当時自分が赤子であったので覚えていないと言うのが理由。

それを敵であったのになぜか俺を助けてくれたという、あの人から聞いたのはつい先日のことだ。

だが、あの人も自分を隠して育て続けるのには無理があったらしく、自分を【忍術学園】に行くよう命じたのが一昨日。

そしてあの人が何も言わずに姿を消してしまったのが昨日のことである。

説明口調なのは仕方が無い。

そういうわけで俺は【忍術学園】へ行くことを決め、10年間暮らした家を離れた。



こんな俺に忍術学園が与えてくれたのは、知識と仲間、そして愛情だった。ほかにもたくさんあるのだけれど。

今でも入学初日に食堂のおばちゃんに作ってもらったおにぎりの味が忘れられない。塩のみの味付けなのだけれど、なんていうんだろうか。あったかい、ただの温度の話じゃなくてもっとこう、心が温まるような気がした。(それが愛情だと知ったのは、入学して数ヶ月経った頃。三木に教えてもらった。)

あの人は俺に生きる術を教えてくれたけれど、感じるのは愛情ではなく義務感だった。それでも俺はあの人を尊敬しているし、感謝している、目標にもしている。だって、あの人は俺が知る唯一の【親】だったから。

学年が上がるにつれて減っていった仲間も、己の手で数えれらるまでになってしまった。

俺はこの学園を守りたい。俺には愛情がわかるから。仲間がいるから。



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