目を開けると見慣れた漆黒の世界。
ここは己の主にして、住み処でもある 遊城十代と言う人間の心だ。この心に住み始めてもう幾日たったか分からない。だが、今まで暮らした人間の中では一番住み良かった。

この人間の心には三つの世界があり、そのうちの一つを己が陣取っているような形だ。まぁ文句を言うものはいない。いたところであの悪魔ぐらいだろう。
この世界の天気は常に曇天。雨が今すぐにでも、降り出しそうで降らない。それはまるで己の主の心のようで吐き気を覚えた。(時たまに走る稲妻は自分を軽蔑してるようで嫌になった。)
そして、更に嫌になるのが断崖絶壁から見える漆黒の城だ。堕ちたら二度とこの地には帰っては来れないだろうと思う程の崖。灰が下に行くほど深く濃くなりすぎていて見る度に苛々が増した。
自分を嘲笑うかの如くそびえ立つあの城は何回眼にしても、


「お前の世界には色が無いんだよ。」
あるとすればお前のその金だけだ。と、突然やってきた主に指を刺されながら言われてしまった。発言内容は良く良く理解している。その証拠に彼の足元だけが両の眼の用に鮮やかに彩られている様に見えたからだ。(別に望ましいとは思ってない。)
「お前、こんな無色の世界に居て楽しいかよ?」と、近付かれ有無を言わさずに左手首を捕まれこの世界から引きずり出された。

眩しさに眼を固く閉じるが段々と瞼に突き刺さる光に慣れてきたのでゆっくりと瞳を解放させた。すると、どうだろうか。

目の前にあるのは、己達を見下ろすかの如くそびえ立ち、に染まった天まで切り裂かんとしている濃紺の摩天楼達の群れがあった。
「…ッ!?」
あまりの摩天楼の高さと大きさに言葉を発することが出来ず、そしてその偉大さに脚に力が入らなくなり座り込んでしまった。しかし、左手は捕まれたままだった。

「覇王…お前はもうちょっと周りを見ろよ。」
誰も一人にするとは言ってねぇし。と、付け足され悔しくなった。ただの己の負け惜しみだ。そんなの分かってる。だが、悔しくて堪らなかった。
あの、全てを見透かすような瞳が…
「自慢か、それとも、周りの仲間とやらの力で己が神と言う愚かな存在にでも成り上がったと言う自己満足か。」
左手首を拘束していた奴の手を無理矢理離し、立ち上がって距離を取る。
「ちげぇーよ。誰が仲間を乱用するなんて言った。ユベルでもねぇし勘違いするなよ。」
横目でちらりとこちらを見られた。そのに彩られたその色がムカつく。(嫉妬ではない。)
「憎くなる程、貴様が嫌いだ。」と、呟けば「同じ顔してる奴に言われたくない。」と跳ね返ってきたが正直正論だなと思った。思ってしまった。


その後、「帰る」と一言告げてこの世界に帰ってきてしまった。(まだ、帰りたくなかったとか、そんな幼い子供のような感情は抱いていない。)
あまりに見慣れ過ぎてしまったこの風景は、あの鮮やかな摩天楼達を見た後だとなんだかぼやけてしまう。

別にあの世界が羨ましかった訳じゃない。そうではない。違う。違うはず。違う…と思う。



「爪を噛んで考え込んでいる奴が何処にいるんだい?」と陽気な声が聞こえた気がした。



プロトタイプ
マイナス思考



ちなみにユベルの世界は黒とパッションピンクだぜ。

…。(何と無く理解できてしまうのと、嫌な予感が、)




*後書き*

どうも!今回、企画にダイレクトアタックした者です。覇王様と二十代様にありったけの愛を注いでおります!!!
覇王城建設企画と言うことで城がこの話に出ましたが、あの城に覇王様が行く日が来るのでしょうか?!(他人事)
参加させていただき真にありがとうございます!!!
'10,11,22.

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