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□●眠れない夜
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母さんの事は、納得は出来ないけど、自分なりに受け止めたつもりなんだ。
クリスタルになるんだとしても、母さんの分まで生きようって。
皆と生きようって。
でも、何故だか急に怖くなる時がある。
眠ろうとすると、母さんの事とか、ルシの事とか
全部が怖くて震えが止まらなくなる。
そんな時は、周りで眠る誰にも気付かれない様に息を潜めて、睡魔が震えに勝つのを待つんだ。
震えが止まらない。
皆が眠りにつく中、僕は混乱していた。
気を抜くと呼吸が荒くなってしまいそうだから、息を止める様に堪える。
眠る場所に岩陰を選んで良かった、とか、そんな事を思いながら僕はただただ震えが止まるのを待っていた。
大丈夫、皆からは見えないはずだし、皆はもう眠っているはずだ。
彼を除いて。
今日の見張り番はスノウだ。
不意に物音がして、身体が跳ねた。
自分の身体を抱え、息を潜めたまま待っていると、ライトさんの声がした。
「スノウ、交代だ」
「解った、おやすみ義姉さん」
どうやら見張り番の交代の時刻らしく、会話の後、足音が皆の眠る方へと響く。
その途中で、不意にスノウは足を止め「あれ?」と呟いた。
そして、その足は僕が居る岩陰へと向けられた。
ばれてしまう。
どんなに息を潜めても、僅かに漏れる乱れた呼吸と震えはごまかせない。
大事(オオゴト)になんてしたくないんだ。
彼に、スノウには見られたくないんだ。
来ないで。
そんな願いも虚しく、僕の頭上から声がした。
「………どうした?ホープ…」