過去拍手
□第八回
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「…んっ」
那岐の口からチョコレートが渡される。
もともと柔らかい生チョコが体温によって溶けてきた。
「ほら、ね?」
千尋の唇についたチョコを舐めながら那岐を顔を離した。
意地悪く笑われては千尋の顔も真っ赤に染まってしまう。
「…甘い…」
思わず呟いた千尋の言葉に那岐は笑った。
「僕が食べさせてあげたからじゃない?」
「なら、私からも甘いチョコをあげる」
千尋は机の上のチョコを口に含むと、今度は自ら那岐に口づけた。
ほろ苦かったチョコが那岐のところへと運ばれた瞬間、甘さを伴って溶ける。
「…ありがと」
那岐は千尋の髪、額、そして瞼へたくさんキスをした。
その拍子に瞳に溜まっていた涙の粒がつ、と頬を伝った。
―――甘い甘い、幸せの涙が―――
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