過去拍手

□第八回
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「…で?」

「チョコ…焦がしちゃったの」


適当に机の椅子へと千尋を座らせ、自分はベッドの上に腰を降ろす。

その結果はチョコだと思われる黒い物体を目にし、匂いを嗅いだ瞬間から予想はできていた。


「…まぁそういう事もあるよ」


千尋は出来る料理のレパートリーは少ないものの下手なわけではない。
失敗も滅多にしないので珍しい。


「予備の材料も残ってなくて…」


みるみる内に千尋の目に涙が溜まっていき、こぼれ落ちるのも時間の問題だ。


「那岐と両想いになれて初めてのバレンタインなのに、失敗しちゃうなんて…」


まずい、と思い那岐は千尋の側に寄った。
椅子に座っている千尋をこちらに向かせ、自分は地面にしゃがみ目線を合わせる。

机の上には黒くなったチョコレート。

那岐はそれに手を伸ばし、千尋の目の前で食べて見せた。


「那岐っ、」

「少し、苦いけど。…おいしいよ」

「でも…」

「…嘘だと思うなら、食べてみる?」


那岐はもう一つチョコを口に含むと千尋に口づけた。





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