過去拍手
□第八回
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バレンタイン
「はい、那岐出ていって出ていって」
「分かったから押すなよ」
ぐいぐいと背中を押され、リビングから追い出された那岐はもう自分の部屋へ行くしかない。
2月14日―――一年のうちで乙女にとって大切な日。
それは千尋にとっても例外ではない。
同居をしていていつもお世話になっている、従兄弟の風早。
そしてついに恋人となった那岐への感謝と愛を伝えるために。
作っているものを途中で見られるのが嫌な千尋は毎年 従兄弟二人をリビング、台所から追い出す。
―――風早はまだ仕事だが―――
「よし、作っちゃおう!」
風早には少しだけお酒を入れた大人なチョコ。
那岐にはハート型の生チョコを…
今年は少しだけ差分をつける事にしたのだ。
―――――――
コンコン
那岐の部屋のドアが鳴る。
「…那岐ぃ……」
外からは弱々しく情けない千尋の声が聞こえる。
「千尋、できたの?」
ドアを開けるとどことなく焦げ臭い匂いがする。
そして皿の上に何やら黒い物体を乗せて持っている千尋が。
「…とにかく、入りなよ」
千尋を部屋に招き入れ扉を閉めた。
、