過去拍手

□第二回
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「遅い」


いきなり那岐の目が開く。
至近距離で目が合ってしまい千尋は思わず後ずさった。


「きゃあ!?」

「ほんと千尋はウブだよね。
まぁ本気でやるとは思ってなかったから努力賞ってとこかな」


衣服についた埃を払いながら那岐は千尋との距離をいつの間にか詰めたと思えば自らの唇で千尋のそれを塞いだ。


「ん―――!?」


長く甘い口付けの後、二つの影がゆっくりと離れた。


「はい、よくできました」


ごちそうさま、と言い残して那岐はその場を去ってしまった。


(ずっるーい!)


突然こんな事をされていつも那岐に振り回されてばかりな気がする。


これでは割に合わない、と千尋は意気込んで那岐の後を追った。




「―――那岐!」

「ちひ…」


振り向くや否や、名前を呼び終わる前に千尋は那岐の首もとを引っ張り自ら口付けた。


「なっ……!」

「私だってやられっぱなしじゃないもの!」

真っ赤になりながら千尋は急いでその場を走り去った。


「……不意打ちは反則だろ…」


今度は那岐も頬を染め千尋の大胆な行動に驚いた。


「本当に、千尋は……」


ふっと微笑むと愛しい人を追いかけた。


「千尋」

「わっ!ちょ、顔見ないで!」

「ダメ。もう一回」


そしてもう一度、二人はチョコレートよりも甘い甘い口付けを交わした。





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