とある馴れ初めの物語

□希望の光
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バンブルビーのビークルにはサムとミカエラ、そしてユラが初めて会ったときに苦手だったシモンズと、サムの友人のレオが乗っている。
(シモンズには出発前に早速「NBE-oneのスパイめ」と言われてしまい、ジャズが背後から物騒なものを向けていた気がする…)
仲間が多いのは心強いようで、少し居心地が悪かった。
ユラたちは彼らより少し後ろを行くことにしたが、今回初対面の双子のオートボットたちがジャズ(というかユラ)を挟んで色々と話し掛けてくる。





《希望の光》





『オレはマッドフラップ。よろしくな。』
『オレはスキッズ。よろしく。』
『なぁジャズ、あとでオレと背え比べしよえぜ〜?』
『その子ジャズのガールフレンドなのか?可愛いな。』
『だー!お前らさっきからうるせぇ!俺はそっちに聞き耳たててんだよ!サム達の会話全部聴こえてんだろうな!?後でお前らに聞くぞ!?』
『北緯29.5度、東経35度。』
『そこにオプティマスを連れてくるんだって〜。』
『地球の裏側からだぜ!』
『聴こえてんのかよ…!』

ジャズのツッコミに驚いたようにリアクションをして、双子たちはケラケラと笑いながら今度はバンブルビーを挟みうちにしだした。

目指すものはもうすぐ近くにある。
もしかしたら、オプティマスも復活するかも知れない。
そうすれば、ザ・フォールンを、メガトロンたちを食い止めることができる…
嬉しいはずのことだが、考えるたびに胸が苦しくなる。

『ったく…ユラ、どうした?』
「ちょっと、怖くて…」
『今更だろ?』

後悔はしたくない。
しかし、ここにきて決意が揺らぐ。
事の重大さが理解できないわけではいが…

「…メガトロンさん、どうなっちゃうんでしょうか…」
『奴を放っておけば、また良くない何か起こる。それが大多数の意見だと思うぜ?』
「彼に考え直してほしいと思うのは、無理な話なんでしょうか…」
『無理ってーか、虫がいい話だろうな。考え直したところで、取り返しのつかないことを奴はしてるんだ。』

弱気になっている自分に、ジャズは敢えて甘くはない言葉を選ぶのだろうと思う。
下手な慰めはしない方がいいと思っているはずだ。
弱音を吐いたところで、誰かが優しくしたところで、甘えたところで全てがハッピーエンドになるわけがないのはわかっているが…

『忠告しておくが、危険だと判断したら俺はお前を連れて逃げるからな。』
「はい。わかりました。」
『…本気なんだな。』

少し寂しげに、ジャズが笑ったような気がした。

「本気です。」

本当は、考えただけで手が震える。
目の前で起こったことを忘れたわけではないし、正直なところ、彼をまだ怖いとも思う。
ジャズが言うように、ぶっ飛んだことをしようとしているなとも思う。
しかし、メガトロンは聞く耳を持たないようなタイプではないはずだ。
もし、彼が何を話しても無駄な相手なら、きっと今頃自分はここにいない…。

『ヤバい…警察だ…』

目の前からやって来た“バリケードではないパトカー”が、方向転換して追いかけてくる。

『クソ…ディセプティコンなら一撃なんだがな…』
『なぁスキッズ、あれの顔面撃っていい?』
『ダメに決まってるだろ!このバカ!』
『お前らとにかく狭い道入れ!撒くぞ!』
『わかった撒くぞ〜。オレたちチビでよかった〜。』
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