とある馴れ初めの物語

□希望の光
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“ディセプティコン…小僧の居場所を探知した。”



“追跡する。”



サウンドウェーブの通信に、スタースクリームが短く答えた。
おそらく、最初から近くで様子を見ていたのだろう。

(やはりな…)

サムという少年を映し出したカメラの映像を解析した結果、その他仲間らしき人間の中に例の小娘がいるのがわかっている。
ザ・フォールンが消そうとしている小娘だ。
スタースクリームいわく“メガトロンのお気に入り”らしいが、そのメガトロンが余計な感情を持つ前に始末するようにと、ザ・フォールンから命令が下されているはずだった。

だが、命じられていた筈のスタースクリームはそれをしなかった。
そのため、メガトロンと直接関わりのない者達が何体も送り込まれたのだ。
そこまでして小娘一匹を始末しなければならないのかと、呆れと驚きが一度に沸き上がった。
ある意味新鮮な気分を味わった。

あの小娘一人のために、事態はおかしな方向へと向かっている。

サウンドウェーブはそう確信していた。
しかし、自分がメガトロンについていくと決めた以上は、“まだ”ついていくつもりだ。
自らが敢えて“悪”となることで他者を守ろうとする…犠牲を払ってでも故郷である星を甦らせようとする…それができる者はなかなかいない。
自分達に必要なのは、自らの首を絞めていることにも気付かぬような仲良しごっこではない。
ある意味で、力を振りかざす独裁者という存在は必要なのだ。
メガトロンはそれをわかっている。

メガトロンが何故なんの変哲もない人間の小娘にそこまで惹き付けられるのかは理解不能だが、それは、彼が初めて見せた素直な感情だ。
今まで己を殺してきた反動なのか、気の緩みなのかはわからないが、あの小娘が邪魔になる存在かどうか、サウンドウェーブはまだ見極めかねている。
メガトロンが目的を捨てると言い出したら、その時はこの手であの小娘を殺すかもしれないが…今はまだその時ではない…

『…』

メガトロンとスタースクリームが見せた怪しい動きは察知していたが、それも敢えて何も言わずに放置した。
このまま行けば、ザ・フォールンの計画は失敗に終わるだろう。
そこまで読めていても、サウンドウェーブは何の行動も起こさないことにしたのだ。

まだ、その時ではない。

これが最後のチャンスというわけではない。
それに、ザ・フォールンが“独裁者”になれば、早い内にその狂気は自分達の周りにまで広がっていくだろう。

他者から見ればメガトロンも同じなのだろうが…

何にせよ、時がくるまでは動かないことに決めた。
その時は、メガトロンが決めるはずだ。

あとは、その選択が誤ったものではないことを期待するだけだ…
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