とある馴れ初めの物語

□希望の光
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任せておけとは言ったものの、レノックスは少々困っていた。
どうやってこの局面を切り抜けるべきなのか、いい案は今のところ浮かばない。

そんな彼の目の前で、ビークルモードのまま拘束され、運ばれていくオートボット達。
彼らをこのままギャロウェイ氏の思惑通りにするわけにはいかない。
自分達が、そしてオートボット達が動かなければならないというのに…

「少佐、電話です。」

その言葉に始まり、消え失せかけていたものが甦った。


“例のトラックを運んでくれ。

場所はツタンカーメン…

今から言う座標に投下しろ…

ここに来れば復活させられるかもしれん…”


声の主はシモンズだった。
死んだはずのオプティマスを復活させられる…そんな話を、普通なら信じるわけもない。
しかし、自分が目にしてきたことを思うと期待してしまう。
金属生命体の彼らには、人間には理解できない奇跡を起こす力がある。



レノックスは聞き出した情報を元に、部下に座標を調べさせた。
場所は、紅海の先端…

「おい、エジプトだぞ…オプティマスを運んだところで、いったいどう復活させるつもりだ?」

エップスがそう疑問を投げ掛けるが、自分にだってそんなことはわからない。
わからないが…

「彼を信じるしかない。」

彼らに賭けるしかない。
今はそれが彼らに託された希望なのだ。

「だがどうやって…」
「…」

「エンジントラブル…」

兵士の声に、考え込んでいた二人が顔を上げた。

「エンジントラブルを起こしたことにしましょう。」
「はぁ?おい待て、何言ってる…」
「それだ。」

何かと頭のキレるレノックスだが、思いもよらない大胆な行動を思い付く。
彼の近くにいる者達も、しっかりとそんな彼に染められているらしいと、エップスは改めて痛感した。

「一芝居打とうっていうのか…?」
「それでいくしかない。」
「では、タイミングを見て機体を揺らします。」
「頼んだぞ。俺は“VIPの安全を確保”する。」
「はい。」
「ったく、相変わらずだな…。俺もか…」






レノックス達の様子を、ギャロウェイは訝しげに見ていた。
軍人たちが良からぬことを企んでいる気がしてならないが、彼らの思い通りにさせるわけにはいかない。
危険なエイリアン達を、我が物顔でのさばらせておくわけにはいかないのだ。

まったく気に食わない軍人どもだと心の中で悪態をつく。

それも、あと少しの辛抱だ。
予定通りに事が進めば、彼らも無駄な抵抗はやめることだろう。
大統領命令は絶対だ…そう、胸ポケットに仕舞っていた紙切れを確認するように胸に手をやった。
これさえあれば、誰も逆らうことはできない。
この紙切れさえあれば。
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