とある馴れ初めの物語
□決意
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『そこのガキ、話がある。』
彼の言葉に警戒するが、バリケードは『時間がない』とこちらの不安を煽るような言葉を口にした。
『仲間の居場所を知ってる。』
「サム達の…ですか?」
『ああ。何処へ向かうのかもな。知りたければ俺と取引をしろ。』
どういうつもりで話を持ちかけたのだろうか…戦うつもりはないのか、これは罠なのか、まさか寝返るつもりなのか?
様々な疑問が浮かび上がるが、様子を見る限りでは彼も焦っているように見える。
「ジャズさん…」
『どういうつもりだ…?』
『っ…クソがっ…!俺も少しばかりヤバいことになったんだ!手を貸してやる代わりにお前達も手を貸せ!』
“ヤバい”という言葉を裏付けるように、バリケードの体にはあちこちに傷が走っていた。
『なんなんだそのガキは!』
『ユラを拐ったのはお前だろ?』
『一部の独断に手を貸してやっただけだ!傷付けはしなかったぞ!それがどうして…何故俺が命を狙われるはめになる!?』
『知るかよ。』
『この雑魚がっ!』
バリケードは無数に棘が突き出した形のホイールを取り出すと、ジャズの背後に投げ付けた。
不愉快な金属音を響かせ、周囲に潜んでいたディセプティコン数体がよろよろとその場に倒れていく。
バリケードが戻ってきたホイールを仕舞うと、その背後で立ち上がりかけた一体をジャズが撃ち抜いた。
あまりに突然で、そしてあまりにあっという間の出来事で、ユラには何がどうなったのかがほとんどわからない。
『条件は…?』
『小僧の行き先はワシントンDC、国立航空宇宙博物館。目的はSR-71。お前達はあの放送をジャックした老い耄れを始末しろ。』
『だぁっ…!?テメッ…!俺は条件を聞いただけだろうが!』
『条件を呑む気がないなら今すぐ忘れろ!どうする!?』
『ンの野郎っ…!』
『取引は成立だ!そうだろう!?』
一方的に条件を押し付けられた形ではあったが、サム達の行き先を知ることができた。
バリケード自身も何故か命を狙われるような事態になっていてあまり余裕はなさそうだが、おそらく偽りの情報ではないはずだ…
「あのっ…」
『なんだ?』
「ありがとうございます!」
『…』
「ジャズさん、急ぎましょう…!」
『チッ…』
ビークルモードのジャズに乗り込むと、その後ろでバリケードもまたビークルへとトランスフォームした。
『ついてくるつもりか?』
『ただの“リハビリ”だ!とっとと行け!』
バリケードはユラをスキャニングすると、自らの助手席にホログラムのユラを投影し、別方向に走り出した。
『なんなんだアイツは?』
「優しい方だったんですね。」
『お前には、そう見えたんだな…』
「…?」
『なんでもねぇ…』