とある馴れ初めの物語

□長い序章
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決着が付いたあとというのは、どこか、呆気ないような雰囲気だった。
軍人たちも一仕事終えたような空気だし、ついさっきまでの戦闘が嘘のように静まり返っている。
周囲を見ればその爪痕は激しく残されているが…

『俺も発言していいか、司令官。』
『どうした?ジャズ。』
『さっき保護した人間なんだが…気になることがある。』

ジャズが指差す先にいるのは、例の民間人(ユラ)だ。

ジャズには、メガトロンがやけにこの民間人に執着していたような気がしてならなかった。
人間を盾にしたというなら頷けるが、ただ利用したいだけなら執拗に追いかける必要はなかったはずだ。
しかしメガトロンは確かに彼女を追いかけた。

『執着していたのは何か、理由があるんじゃないかと思うんだが…』

ジャズのその一言には、サムとミカエラも反応を見せた。

「オプティマス、あの子、なんでかわかんないけどメガトロンのことを知ってたよ?」
『それは本当か?サム。』
「ああ、間違いない。本人がそう言ってたんだ。“メガトロンを知ってる”って、随分無口な子みたいだけどね。」
「それに、いつの間にかいなくなってたわ。」
「そうだ。あと、こんなちっちゃかったけど、死んだディセプティコンを見て泣いたりとかね…」
『俺が見たときは奴の肩に乗ってたぜ?怯えてるようには見えたが、正直なところわからない。だが少し疑っている。』
『そうか…』

オプティマスは少し険しい表情で例の民間人を見ていた。
注意深く観察してもただの人間にしか見えないが、確かにメガトロンに追いかけられる姿を彼も見ている。
何か理由がある。
必ずだ。
オプティマスはそう確信していた。

それがちょっとした勘違いで、ただメガトロンに気に入られて巻き込まれてしまっただけだなんて誰も知る由もないのだが…
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