短編-死帳
□ワインはかみさま?
「あ、そうそう」
捜査中に突然何を思い立ったのか、月くんが私を振り返り切り出した。
「竜崎知ってる?」
「何がです?」
「2010年1月、ねん●ろいどぷち Case File #02が発売されるんだよ」
《ワインはかみさま?》
驚いた。
いや、これはねんど●いどぷちが発売されることに対してではなく(私たちの博する人気の程は把握している)、
彼の口からマスコットの話が出てくるということに驚いたのだ。
このような話は普段なら私が振る話。
そして彼に無視・流す・スルーのうちどれかひとつを実行される話。
何故急にこんな話をするのだろうと思っているものの、
普段はできない会話ができるという いつにない高揚感で私の心は満たされていた。
「えぇ、知っていますよ。月くんが警察手帳持ってたりテニスウェアだったり・・・」
あれは絶景です。
あの屈託のない笑顔が最高なんですよねv
「竜崎もテニスラケット持ってたよね。あと電話してたり・・・」
私なんざどうでもいいんですよ月くん。
どうでしょう朝までずっと月くんの魅力を語って差し上げましょうか?
「いやしかしまさか月くんの生脚を3Dで拝めるとは思いませんでし た 」
言い終わって気付く。
ヤバい。
マニアックな単語が出てしまった。
いつものように殴られる。
そう思っていた。
しかしいつまで経っても殴る様子はない。
(・・・・・・・・?)
いつから私はこんな条件反射が身についていたのだろう。
私は両手でボサボサの頭をしっかり守っていたのだ。
こんな芸をする猿がいた気がする、とくだらないことを考えながら戒めを解くかのように両手を頭から離した。
「りゅ」
「?」
「竜崎は僕の脚がす・・・好きなのか・・・?」
唐突にそう問われる。
目の前の月くんを見れば、顔を俯かせて真っ赤になっていた。
「はい、月くんの脚も手もナニも全てが好きですよ」
当然だ、とでもいうように私は言った。
だって本当だから。
「な・・・なんだ・・・・・・・だったら、・・・」
言葉を詰まらせながら耳まで紅く染めこう言った。
「いくらでも見せてあげるのに・・・・・・」
え?
い・・・今月くんは・・・・・・
「み・・・見せて・・・くれ、る・・・・・って言いました・・・・・?」
「うん・・・・///」
「触るのは・・・・・」
「え・・・・・ ・・・いいよ」
神様神様ありがとうございます私は貴方の存在を信じていませんでしたがやはり天から私を見ていてくださったのですね
善行を積み重ねれば神からお恵みがあるのですね!!
(では早速・・・と言いたいところですが、月くんは長いズボンをはいていてなかなか触りづらいんですよね・・・)
屈みながら指を銜えてどうしようかと悩んでいると、上から少し困ったような声が降ってきた。
「これじゃあ触りにくいよね・・・」
「はい・・・どうしま・・・・・・・あ!」
そうだったそうだった。
「ど、どうした?」
「クローゼットにあの日月くんが着用していたテニスウェアがあります。忘れるところでした。どうぞ」
「・・・準備いいね竜崎」
クスッと笑うと彼はテニスをするわけでもないのにテニスウェアに着替えるべく奥の部屋へと消えていった。
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