Webアンソロジー企画
□ハーフタイム・ティーン
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「お疲れさん!」
そう言いながら、突っ立ったまま話をしていた二人の間に私が割り込むと、「うわ、堀口、髪ぼっさぼさ」そう言って池ちゃんは苦笑した。
対する西森は、
「汗ちゃんと拭かないと風邪ひくぞ」
そう言うなり、私の首もとに巻きつけたタオルを無理やり引っ張り出して、それを頭の上から被せてくる。
「さっき拭いたし」私はすぐさま、視界までも遮るそれをどけると、
「西森は心配性すぎるっての」
そう言って、斜めがけ鞄を地面の上にどかっと下ろした。学校のロッカーにいくら教科書を置いていても、体操服や他の物で埋め尽くされた鞄はいつも重くて困る。
「西森は優しいからな」
何が面白いのか、池ちゃんはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて、チラチラと西森に目配せする。
それを受けた西森は「池田うっぜ」と小さく呟いて、
「別に、なんでもないからな」
不思議がる私が、どうしたのかと口を挟むより先にそう答えた。けれどその言葉とは裏腹に、西森は池ちゃんを睨んだままだし、池ちゃんはニヤニヤ笑いをやめなかった。
そんな二人のおかしなやり取りに違和感を感じつつも、
「西森は優しいって言うより、お父さんって感じがする」
私は以前からずっと思っていたことを口にした。