Webアンソロジー企画

□ハーフタイム・ティーン
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夢中で喋る女子たちを置いて、荷物を持ってそっと部室を出た。

体育館横に併設された部室棟は、出るとそのまま校門へと繋がる道に出る。
外は室内とは違い、ツンと人を寄せ付けないような寒さがあった。それは、まだ汗の乾ききらない――男より短いんじゃないかというくらい短い――私のベリーショートの髪と体を容赦なく冷やす。

私は首に巻きつけたままのタオルで、手早く髪を拭きながら、短い髪の毛に触れた。
短く、ぐちゃぐちゃに乱れた髪をどうにかしようという気はない。
鏡を見て念入りにセットしたとしても、この無造作ヘアにこれといった変化はないし、部活終わりにワックスなんて、気持ち悪くて付けていられない。
人からどう見られようと、特に気にしない。
こんな私のことを、友達や部活仲間、挙句は家族までもが、

『恋でもすれば変わるのに』

――と、呆れ混じりに言うようになったのは、ここ最近の話だ。

高校生にもなると、女子も男子もすっかり色気づいて、極々自然に恋愛感情を持ち始め、次々と付き合い始める。らしい。
そうはっきりと断言できないのは、私がその中の一人に含まれていないから。
極々自然に、なんの前触れも無く、恋を見つけて巣立っていった友人たちとは違い、私にとって“恋愛”とは、まだまだ縁遠いものだとしか感じられずにいた。

そんなことを考えながら校門前の砂利道を歩いていると、駐輪場に見知った顔を見つけて、

「西森と池ちゃん!」

自他共に認める、馬鹿みたいにデカイ声を張り上げて、私はそこまで駆け寄って行った。
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