Webアンソロジー企画
□ハーフタイム・ティーン
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先輩の一声によって、それぞれが口をつぐむと、それまで鳥小屋のようにうるさかった部室が途端に静かになった。
先輩後輩関係なく仲がいい、うちの女子バスケ部は、こういう時に、より一層強いチームワークを発揮するなと私はいつも思う。
会話の内容云々よりも、こうした空気にワクワクしてしまう私は、皆と同じく先輩を穴が開くほど見つめながら、楽しくて、弾みだしたくなるような気持ちを必死で抑えていた。
もう、高校一年の冬にもなろうというのに――私の中身は中学時代のまま、何一つ変わっていないことを実感する。
「…お姉ちゃんの友達の話なんだけどさ、」
すると先輩は、じっと聞き入る私たちに目をやりながら、もったいぶった口調で話し始めた。
「その人、大学の違う学科の教授に恋しちゃったらしくて。その教授を追って今度転科するんだって!」
先輩がそう興奮気味に言い切ると、それまで静かだった部室が、「そんなことあるんですか!?」――何かが弾けたように騒がしくなった。
「教授とかヤバっ!」
「禁断!禁断!」
「ドラマみたい!」
きゃあきゃあと騒ぎ、盛り上がりだす面々の中で――私は一人、ぽかんとする。
「そんなことのためにわざわざ転科するんですか!?」
皆とは別の意味で驚いてしまった私が、思わずそうこぼすと、周りがいっせいに驚いたような、呆れたような顔をして、私を見る。
そして誰かが、
「ミチはわかってないな〜」
大きなため息と一緒に、吐き出すように呟いた。