本当に不可解なおとぎ話

□となりのトトロ
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スタジオ・ジブリの名作「となりのトトロ」は極めて状況把握が困難な物語だった。

それゆえに、アノ作品にまつわる様々な噂が一人歩きし、都市伝説化しているモノも珍しくはない。

無理もない。
なにしろ主役であり、最も状況を把握しているであろうトトロがしゃべれないのだ…
…って、人間じゃないんだからしゃべれないのは当たり前だろう!などと言わずに聞いてくれ!

オバQ、ガンモ、ワンピースのチョッパーなどと、ファンタジーの世界には数多くの不思議な生き物やオバケが登場するが、特に主役級となると、その多くに共通するのは人語を解するという事である。

無論、それはファンタジー特有の現象であり、現実の世界で人間以外の生き物がしゃべっていようものなら異常事態と言わざるえないが、あの世界では決して珍しいことではない。

むしろ、主役級の生き物が人語を解する事が、宿命付けられているかのような気がしてならない。

その理由は、おそらく彼らが得体の知れない存在であるからではないだろうか?

テレビや映画という限られた放映時間の中では、状況の把握に費やす時間も限られている。
その時間内に得体の知れない生物の状況を、その他の登場人物や視聴者が把握するには、やはり得体の知れない生物本人に説明してもらうのが一番だろう。

「猿の惑星」の猿達など、聞いてもいない事までペラペラとしゃべってくれるので、視聴者は短時間で容易に状況を把握できたのだと思われる。

ファンタジー世界の不思議な生き物達には、自分が何者なのか?または何処から来て、何ができるのか?などを物語の円滑化のために、自ら説明する暗黙の義務が有るのかも知れない。

そんな訳で、となりのトトロは全体的な世界観はかなりリアルに作られた作品だが、トトロが登場すると急に曖昧な世界観に変わってしまう。

まぁ、それがアノ作品の味わいなんだろうけど…

ファンタジーの世界では、説明が必要なヤツほど、よくしゃべる方が良いのだ。


さて…本題に入ろう。

今回、題材に取り上げたシーンも、(あくまでも物語の中で)現実の事なのか、夢の中の事なのかがよく解らない。

サツキ達も「夢だったけど夢じゃない」などと、曖昧な供述をしている。

あのシーンが夢の中の事ならば、どんなに荒唐無稽でも問題は無いが、メイとサツキが同じ夢を共有していたり、直接は関係の無いお父さん目線で描かれていたりと、一概に夢だったと断定はできない。

もしかして夢だったのは、木の実が異常成長したところだけで、他はメイとサツキが実際に体験した事なのでは?…などと、勝手な解釈で今回は進めていきたい。


問題のシーンは、トトロが巨大なコマを回し、メイとサツキと小型のトトロ2匹を自らの胴体にしがみ着かせ、特に何の説明も無く、一気に上昇して村中の夜空を優雅に飛行するというモノだ。

メイとサツキは特に疑問を感じる事無く、トトロの胴体にしがみ着いているが、画面を見る限り足場となるような突起物はトトロの身体には見当たらない。

トトロの胴体部分の直径は、サツキの身長のおよそ1.5倍はある。
サツキの身長を130cmと仮定すると、トトロの胴体部分の直径は195cm、トトロの胴体の円周は6.123mとなる。

次にメイの身長を80cmと仮定しよう。
人間の身長とリーチはほぼ同じだから、メイのリーチも80cmと想像できる。
従ってトトロの胴体の円周はメイのリーチの7.65倍であるという事になる。

これではメイにしてみたら、ほぼ真っ平な壁にしがみ着いているのと変わらない。

せめて円周が小さければ、大胸筋や内転筋の力を使ってしがみ着いていられるが、ほぼ真っ平ではそれらの筋肉は伸びきったままで、全く力が掛からない。

つまりメイはほぼ握力だけでトトロの胴体にしがみ着いている事になる。

トトロが「ガオー!!」と雄叫びをあげるシーンに至っては、トトロは地表面に対してほぼ腹這い。
トトロの腹にしがみ着いているメイは、壁どころか、天井にしがみ着いている状態になる。

自らの体重と地球の引力が自分の身体をトトロから強引にひっぺがそうとしているのに、トトロの真似をして「ガオー!!」と雄叫びをあげる余裕を見せるメイ。

彼女達がやっている事は、足場無しのロッククライミング以上の事なのだ。

フランスのビルよじ登り男ことアラン・ローベルも仰天の荒行!


何度も言うが、あのシーンが夢の中の事なのか現実の事なのかは不明である。

事の真相について解っているのはトトロだけだと思われるが、肝心のトトロがしゃべれないのでは確かめようがない。

あの変な生き物はまだ日本の何処かにいるのかどうかは解らないが、やはりファンタジーの世界には「ワケのわからんヤツほど饒舌であれ」の法則が必要なのかも知れない。

【注釈】
↓[猿の惑星]
ピエール・ブールのSF小説の映画化。
2001年に「PLANET OF THE APES」としてリメイクされているが、話の内容が全然違っていた。
猿が異常に好戦的だったり、前作では猿は基本インテリだったが、新作の猿は時々四つん這いになったり、興奮して騒ぎ立てたり、野性的な面がだいぶ残っていた。
性格も「猿」と呼ばれるのは平気だが、「モンキー」と呼ばれるとぶちギレるなど、怒りのスイッチが解りにくい、めんどくさい性格になっていた。

↓[アラン・ローベル]
フランス人。
リアル・スパイダーマンの異名をもち、世界中の高層建造物に命綱無しの素手でよじ登る、クレージー野郎。
一応、建造物の所有者に許可を取ろうとしているようだが、たいていは許可が下りないため、強硬的に侵入してよじ登り、屋上で待ち受けている警察官に、不法侵入の現行犯で逮捕されるのがいつものパターンである。




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