本当に不可解なおとぎ話

□きかんしゃトーマス
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ちょっと前の事だが「きかんしゃトーマス」の事故数が尋常ではないとネットで話題になっていた。

書き込み内容が正確かどうかは解らないが、事故数のトップはトーマスの同僚ジェームズの48回、トーマスは堂々の2位で42回、以下30回台が肩を並べる結果になっている。


確かに冷静に考えてみれば、これが現実世界のなら大問題だ。

トーマスの鉄道会社が公営なのか民営なのかは解らないが、どっちにしてもここまで事故数が多い鉄道は廃止か、利用客の激減で倒産や第三者機関のテコ入れが入って、役員人事を含めた経営体質の改善を余儀なくされる。

掲示板に書き込んでいた方々は、この事実を取り上げトーマス達を叩いていたが、それだけでは何の解決にもならない。
かといって、アノての掲示板に冷静な意見なんぞ書き込もうモンなら、叩きの格好の標的にされてしまうのでヤメた。

はたして、トーマス達の鉄道会社の事故多発原因はナンなのか?

まぁ、それは致し方ないのかもしれない。
トーマス達がおとぎ話の登場人物(?)である以上、ナンラカの冒険をしなければならない。

ところが彼らは列車である。
敷かれたレールの上以外を走る事が出来ない訳だから、レールの敷かれていない場所に行く事は出来ない。
目的地はいつもと同じ所だ。

冒険とは、日常とかけ離れた環境下で、稀有な出来事に遭遇する事。
つまり、トラブルこそが物語を盛り上げる事になるのだが、トーマス達機関車はそういった出来事に遭遇するには極めて厳しい。


それに頑張って仕事して成績を上げれば良いという訳でもない。
サラリーマンならノルマ以上の働きをすれば高い評価をされるのだろうが、時刻表通りの運行を義務付けられている鉄道ではそうはいかない。
遅くても早くてもイカンのだ!

プロとして当り前の日常業務をこなし、失敗する事で評価を下げ、評価を上げるとすれば長年勤めあげてようやく評価される鉄道業界では、物語はなかなか盛り上らないのだ。

だとすれば、やはり事故でも起こしてマイナスからの逆転をはかる以外に、トーマス達の冒険を盛り上げる術は無いのだ!

事故以外で鉄道でまき起こるトラブルったてせいぜいスリとか痴漢とかキセルとか酔っ払いのケンカとか、乗務員が対処すべきトラブルで、トーマスの出る幕じゃないよなぁ…
まぁあんなのどかな風景に、大都会の深夜の地下鉄並みの人間臭い事件は似合わないだろうしなぁ…
だいたいいずれも幼児向け番組で見せる内容じゃないし…

トーマス自身が直接関与できて、なおかつ、視聴者の子供達にあまりハードボイルドな世界を見せないようにするトラブルと言えば、やはり事故しかないのだ。

無論、これは製作者サイドの都合である。
それを言ってしまってはミもフタもないので、ここではあくまでもおとぎ話の中から事故原因を探って行きたい。

事故にはナンラカの原因が有るハズだ。
言い方は悪いが、事故には必ず責任をとるべき立場の「責任者」がいる。
普通の鉄道事故なら、真っ先にその矢面に立たされるのは運転手である。


実はこの運転手の存在自体こそが、あの鉄道の事故多発の原因ではないかと考えられる。
我々の世界の列車の運転手とあの世界の列車の運転手では、少々事情が異なるのだ。

なぜならトーマス達は明らかに意思を持って走っている。

「運転手」という以上、当然運転していると解釈すべきだが、そうなるとアノ世界の列車の運行はトーマス達機関車と運転手の意思の疎通によって成り立っている事になる。
例えばアナタの手足が、アナタとアナタ以外の誰かの両方の意思によって動かされているとしたら、かなりぎこちないではないだろうか?

早い話が、二人羽織である。

大型船なら、船長とオペレーターと操舵手と別々に操作する事も有るが、これは速度の出ない海上だから出来る分担作業で、一瞬の判断が命取りとなる鉄道では出来る限り一人の判断によって操作される事が望ましい。


この場合、トーマスと運転手の関係は、乗馬でいう馬と騎手の列車に近いと考えるべきだろうか?

いやいやトーマス達機関車は、人間と会話が成立している以上、馬より遥かに高等な知能が有ると考えるべきだ。


だったら話が通じるからいいじゃん…と思ったら大間違い!
知能の高い者同士のやり取りは意外と厄介なのだ。

トーマスと運転手の関係は、主従関係というよりパートナーに近く、どちらかが一方的に命令を聞いているだけのようには思えない。
お互い自我を持つ者同士の会話は、なかなか収集が付かず、あ〜でもない、こ〜でもないと言い合っている内に、重大な判断を誤ってしまう事が多いのだ。

「船頭多くして船山登る」というヤツだ。

やはり、アノ鉄道会社の事故多発の原因は、明確でない命令系統に有るようだ。


…さて、今回の検証はネットへの書き込みから発覚した事で、アノ世界の鉄道利用客からの声という訳ではない。

実際、アノ鉄道を利用している人々はどう思っているのか?

結果だけ言えば、彼らの表情から解る通り、ほとんど無関心だったという事だ。

アノ世界の住人達は、トーマス達のまき起こす事故にそれほど騒いでいる様子は無い。

つまり、コチラ側の世界の人間がとやかく騒いでもどうしようもないこと!
電車がホームを数mオーバーしただけで新聞沙汰になってししまうような神経質な我々とは違い、ズ太い神経を持ち合わせたアノ世界の住人達にとって、列車事故など取るに足らない些細な事なようだ。



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