天孫降臨
□飴玉
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「昌浩、何か食べてんのかー?」
全てはこの一言から始まった。
「あー?あ、飴だよ飴。さっき彰子にもらったんだ」
そう言いながら、昌浩は丁重に畳まれた綺麗な染め布を広げて見せた。
床に置かれた布の上で、毬を模擬して作られたであろう美しい模様の飴玉が5つほど転がっている。
物の怪は、しばらくそれを見つめた後に神妙な面持ちで問いかけた。
「飴って…うまいか?」
「え?甘くて美味しいよ。まぁ何個も食べたらちょっとアレかもだけど」
「うーん…俺は苦手だなぁ」
そう言いながら、爪先で器用に飴を突ついては転がしている物の怪の柔らかな毛並を、昌浩は笑いながら撫でてあげた。
「もっくん、食べた事あるんだ?」
しかし当の白いのは、いや、と首を振り苦虫を噛んだような顔で飴を見つめている。
そんな騰蛇を見つめ、昌浩は白い体をひょい、と抱き上げた。「十二神将の騰蛇が食べず嫌いなんていけませんっ!飴なめてる紅蓮も想像できないけど、想像できないからこそ今ここで食べてみてよ」
と、カラカラ笑いながら昌浩は言う。
そんな昌浩を虚ろに見つめていた物の怪だったが、急に口元を緩めて不敵に告げた。
「確かに食わず嫌いはいけないな、よし食べてみるか」
「お!そっかそっかぁ、もっくんは偉いなぁ」
昌浩は純粋に物の怪を感心している。
「でもなぁ、昌浩。
食わず嫌いだったとしても、いきなり嫌いだったやつを全部食べるのは流石に可哀想だとは思わないか?」
そう言われ、確かに…と昌浩は考える。
「じゃ、もっくん、とりあえずなめてみて、駄目そうだったら「と、いう訳だから」
「……へ…」
眩い光と共に、物の怪は一瞬にして本性に変化した。
昌浩は物の怪を抱えていたから、ここからいきなり本性に戻られたという事は。
「ぐ…紅蓮っ!」
必然的に、紅蓮は昌浩を押し倒す形になった。
「ななななななな何で本性に戻る必要が…!」
「あ?だってお前さっき飴を食べてる紅蓮が見たいって言っただろ」
言ったっけ…
……
言ったかも…
意を決した昌浩は、よし、と気合いを入れ、その体勢のまま一つ、飴を取ろうと手を伸ばした。
しかし、その手は紅蓮に掴まれてしまう。
「じゃ、舐めてみるかー」
言うや否や、紅蓮は昌浩の後頭部をガッチリ抱え、互いの唇を合わせた。
「…………」
あまりに突然だったので、昌浩は大きな目をさらに見開き、呆然と唇を捧げたままだ。
気を良くした騰蛇は、くいっと顎を親指で下にずらすと、半開きになった昌浩の口内へと舌を差し込む。
瞬時に昌浩の体が跳ねた。
「んっ…!ぅ…う、ん…んんっ!」
奥で縮こまる昌浩の舌を優しく吸い上げ、絡ませる。
そのまま口内を好きに凌辱した紅蓮は、最後に端にどけてあった飴を口に含み、唇を少し離した。
そのまま今度は昌浩の花びらのように愛らしい唇をペロリと舐める。
「っ!!…ん…ぅ」
昌浩は紅蓮の体を跨ぐようにして腰の上に座らされた。
室内に響き渡る卑猥な音は、2人の口内で飴玉が溶けきるまで消える事はなかった…
…そうです。
終わり