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□何故泣くの、愛しい君へ
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悲しいの、と貴女は言った。

苦しいの、と貴女は言った。

ごめんね、と貴女は繰り返した。



自分には、わかる。手にとるように。他の住人達にわからない細かな感情まで、貴女のことなら全て伝わってくる。


だから貴女の悲痛な訴えが、自分を可哀相だと思ってほしくて口から出ているのではないことをわかっている。


貴女からすれば、私は事実、都合の良い存在。
辛いときに逃げ込める、便利な存在。
そして、そんな弱い自分を受け入れてくれる、絶対的な存在。


でも私は、貴女なら、どんなときも受け入れる。
貴女になら、どんなことでもしてやりたい。


「泣かないでください、アリス」

愛おしい少女の涙を拭い、ささやく。

「貴女は何も悪くありません。貴女を受け入れるのは、すべて私の意思です。…そしてそれは、重荷ではないのですよ」


私の言葉が嘘ではないとわかっているからこそ、貴女の涙と謝罪の言葉は止まない。


でもそんな姿さえも、愛しいと感じる。


呆れるほどに純粋で、哀れなほどに自分を後回しにする、私の少女。


「どんなときも、あなたを守ります」


ささやくだけで足りないなら、抱きしめてさしあげます。

抱きしめるだけで足りないなら、ずっとそばにいてさしあげます。


だから、私は貴女の笑顔が見たい。


もし私がそう言えば、貴女はまた無理をして明るく振る舞うだろうから。


貴女の涙が底をつくまで、もう少しだけこの言葉は自分の中にしまっておこう。



「…ビル」

「はい、なんでしょう」


「ありがとう…」


貴女のその一言だけで、私はこんなにも幸せになれるから。



-END-

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