「ゼロ様!」


そういってスザクの目の前を通り過ぎたのは年下の従姉妹。


スザクは神楽耶の夫になるのじゃ、と、無邪気に微笑んでいた幼い頃の彼女を思い出して、スザクは苦笑した。


今ではすっかりガン無視されているが、小さい頃はスザクスザクスザク!と引っ付いてきた、年下の幼なじみ。



(いや、でも小さい頃から横暴だったか?)



一年の内にたまに会う神楽耶は、ひどく我が儘なお嬢さまで。



それでもぴょんぴょん一生懸命飛び跳ねて、スザクの後ろをついてまわる彼女は可愛かったのに、今じゃゼロ様ゼロ様ゼロ様と。



栗泥棒の片棒担いだのも、窓からホッカイロの中の酸化鉄を振り撒いた罪を着たのも、全部僕なのに酷いんじゃないか?とスザクは思う。(あれ?ひょっとして昔から嫌われてたのか、僕)


飲めないワインをグラスの中で揺らしながら、まあ、今じゃあ完全に空気扱いされてるけど…と、スザクはため息をついた。絶縁されたのだから仕方ないけれど、こんな扱いにもすっかり慣れてしまった。



ゼロにシュナイゼルに中華連邦と、この滑稽なパーティーも、あと少しの我慢だ。


神楽耶はといえば、相変わらずゼロに引っ付いて屈託なく笑っている。


本当にゼロと結婚したらどうしたものか。可愛がっていた従姉妹をとられて、僕はやきもちを焼くのだろうか。それよりなにより、あんな仮面の変態男と親戚になるのは嫌だ。絶対にイヤすぎる。


そんな馬鹿なことを考えながら、同席していたセシルに断りを入れ、スザクはテラスに立った。夜の街は不安定に煌めいて、紫の灯籠が闇に揺れている。心に残る、美しい夜景だ。


そうしてふと、後ろから近付いてきた人影に、気付いた。


誰か酔い冷ましに夜風に当たりにきたのかな?と何となしに振り返り……スザクは翡翠の瞳を見開く。



そこには、言の葉で人を殺せたら、と無邪気に微笑んでいた年下の従姉妹が立っていて。



スザクが声を上げるより先、軽やかな足取りで近付くと、彼女はスザクの顔面に一発。


それは深窓の令嬢とは思えない、強烈な一撃だった。


拳で殴ると見せ掛けて、肘で顔面を打ち付けてきた従姉妹に、スザクは目を剥く。ひ、卑怯すぎる、神楽耶…!!!



しかし神楽耶はそんなスザクを冷たく一瞥すると、不機嫌そうに、ただ一言。






「神楽耶以外のおなごと話すでない、馬鹿スザク」






そう言い放ち、しれっとした顔で大広間に戻っていった神楽耶に、スザクはがくりと肩を落とした……。









お嬢さま、というより俺様?
(わらわに負けてこそスザクじゃ!)


END

スザク×神楽耶

というよりカグスザ?

原作じゃありえない+そこはかとなく平和ですみません…!!

神楽耶にとっての一番はスザクじゃない(時たま暫定的に一位)けど、スザクにとっての一番は自分じゃなきゃ気が済まない。

スザクにだけ我が儘な神楽耶って可愛くないですか?



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