激妄想Text※注意!

□海
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■ヤコはまだ戸惑い。ネウロ独白。



オイルを買ってもらって石鹸の元を作り、箱に詰めてしばらく熟成させれば完成だ。
宿の暖炉でそれを作ってしまうと後は暇になってしまった。
昨日は風呂あがりにちょっとだけ誘惑に負けてベッドの身体を任せると、そのまま眠ってしまった。船では船長室の床で寝ている。毛足のながいラグがあるとはいえ、揺れる船内では体中が痛くなる。柔らかいシーツの誘惑に負けて飛び込んで意識を無くしてしまうと、朝気が付いたら真っ裸のネウロが隣に潜り込んでいた。
何でどうしてと混乱していると超不機嫌顔の船長が「奴隷の分際で貴様が勝手に我が輩のベッドに入ったのだ」と言われた。弁論の余地はございませんが船長、なんで裸?
はあ、とヤコはため息を付く。自分の寝巻は脱がされていなかったが何とも危険な朝だった。まだ寒いのだとか何とか言いながら寝台に引っ張り込まれ密着されれば知識に乏しいヤコでも解る。あれは男だ。
今日は船に戻ろう。そしてあかねちゃんと一緒に寝よう。
『あら、旦那様は?』
女将がふと顔を覗かせる。
『散歩に行ってます』
『甘い香りがするね』
『旦那様がココナッツミルクを買ってくれたんです』
『商人ってのは珍しい物好きだね』
「何を話している?」
ぬ、とネウロがいきなり顔を出してきた。
『あらやだ!お帰りなさいまし!』
「ただの世間話だよ」
女将はネウロの姿をみるとそそくさとその場を離れてしまう。
「甘い匂いがするから気になって来たみたい」
「石鹸か」
「うん、でも石鹸とは言えないからミルクを飲んだって言った」
「まあ利口だな」
「船は?」
「思ったより町の大工の腕が良い。修理は大体終わっていた。今夜には終わるだろうから、明日の朝一で出航する」
「ん、じゃあ私船に戻っていようかな」
「駄目だ」
きっぱりと言われてヤコは不思議に思う。なんで?と。
「貴様のせいで女宿に泊まれず欲求不満だ。責任持って処理をし」
「じゃ。私、船に戻りマース」
「チッ」
舌打ちすんな!







なんだか調子がおかしいとネウロは感じていた。
いつも港に停泊すると女宿に一直線。金をばらまいて刹那の享楽に耽る。
だが今回はヤコが間違って普通の宿に案内した。
訂正しようかとも思ったが、またヤコも自分の奴隷だ。ヤコを使おうと思った。
食事のマナーを五月蝿く注意された。
物心ついたときから船乗りだったネウロは、そんな事を注意してくる輩は初めてだった。だが食事についてはもっともだと思ったのでそれに倣った。
風呂に引っ張り込もうと思ったが、石鹸という意外な伏兵にそれを楽しんだ。まあ良い、ヤコにも湯を使わせて寝台に引っ張り込もう。だがワインを飲んで部屋に戻ると、我が輩のベッドで堂々と寝ていた。呼び掛けにも反応しないのにはいらついたが、何だか興が削がれた。他に女を拾いに行くのも面倒になり、そのままヤコの身体を抱いて寝た。細すぎる身体は抱き心地が悪いが、甘い香りは悪くなかった。
素っ頓狂な声で起こされたが、わざと意地悪く不機嫌顔をしてやるとしゅんとして顔を赤くしていた。絶対に目を向けようとしない態度が可笑しくて、ならばと身体を密着させてやった。朝ならば必ず起きる男の自然現象だと頭では理解しているが、棒のように固まるのが楽しい。それで良いかと思ってしまう。
これまで寝台に引っ張りこんだ女は無事だった過去は無い。町娘はもちろん貴族だろうが人妻だろうが或いは子供だろうが。
大体海賊と解って寝台に上がり込むのだから結果はお互い解っているはずだ。無言の同意。一晩だけの共犯者。
(ああ、そうか多分)
あの娘は連れて来られて三日、船乗りの一員になろうとして必死に動き回っていた。女が船に乗る違和感は水夫達は感じていたが、それを上回る気力で少女は働いていたのだ。ヒグチに値切りはもっとイケると意気込む姿は特に。
市場では役立たず呼ばわりしたが本当はそんな事は無い。
船の、一員だから。
そうネウロは自分を納得させる。ヤコがいない、一人で泊まる宿で。
市場で泣かせてしまった詫び代わりに今回だけだ、と。次回停泊したら欲に溺れさせてやろうと勝手に決めて目を閉じた。



しかし。
がさり、と月明かりも高い深夜。暗闇で何かが動いた。
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