激妄想Text※注意!

□海
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■段々仲良くなる



「美味しいそう…!新鮮な魚に肉にみずみずしい野菜と果物…!船の上じゃ食べられないものね…!」
「とっとと食え」
そういってフォークを魚に刺した手をパシリとヤコに叩かれる。
「ご飯前の挨拶は?」
「神を信じてないからしない」
「ちょ!いきなり問題発言!」
「船乗りには信心深い者も多いか。だが嵐も凪も乗り越えるのは自分だ。いるかどうか解らん神頼みなどするくらいならトロイに頼む」
「あんたそんな発言他の人に聞かれたら…」
「異端審問など海の上でも出来ると思うか?そんなことで船長を失うより足手まといの神官を海に放り込んだ方が話は早い」
「…でもさ、ご飯は別じゃない?」
「ム?」
「神様は人それぞれだけど、このご飯達は確かにここにあって私達はそれで生きてるんでしょ?それは感謝の対象にならない?」
「…」
「あんたに感謝とか言っても無駄か。ま、いーや私はちゃんと」
「「いただきます」」
声は綺麗にハモった。
目を見開いてネウロを見ると、超不機嫌そうな顔をしていた。
「…これで良いのか?」
「………完璧!」
「よしでは人参ピーマンは貴様にやろう。肉を寄越せ」
「子供みたいな好き嫌いすんな。肉は渡さない」
「グリンピースは敵だ」
「混ぜて食べれば解らないから」
「…む、地雷のようなグリンピースに当たったぞ嘘つきめ」
「ほら食べれない事無いでしょ?」
「ササヅカの薄ーい味付けと違うからなんとか食べてやっても良い」
「あれは健康管理食だからしょーがないの」
「野菜を一口食ったのだから肉を寄越せ」
「渡さないっつってるだろ」
奴隷にされて初めて、ヤコは笑った気がした。







風呂桶が用意されるとヤコは船に戻ると言い出した。
「こんな夜闇を歩けば人さらいに合うぞ」
確かにその通りだが。
「じゃ、下で女将さんとお話してくる」
「奴隷ならばつべこべ言わず主人の背中を流せ」
「え、えええ!?」
抗議する間もなくネウロは服を脱ぎ捨て風呂桶に使ってしまう。早くしろと言われれば従うしかない。なるべくネウロの身体を見ないようにタオルで背中を擦るが。
「力が足りん。ちゃんと擦れ」
文句を言われた。
「あ」
「なんだ」
「ネウロ、石鹸使った事ある?」
「石鹸?」
「うん、珍しいでしょ」
「ふむ、確かに使った事は無い」
「お父さんが色んな国を通訳して回ってたからさ、作り方を教わったんだって」
「貴様も作れるのか」
「うん。灰と油になるような物を混ぜるの。油になるような物が貴重なんだけど」
「それこそ異端審問にかけられるぞ。魔術を使うと」
「大丈夫、輸入した事になってるから」
ちょっと待ってね。とヤコが自分の荷物を探り出す。すると小さな油紙に白い塊を取り出す。
「頭からやるよ?」
「うむ、くるしゅうない」
「殿か」
白い塊を手の平にこすりつけ、それから頭皮に擦り込むように広げて行く。ふわり、と甘い香りが部屋が広がった。
「…甘い匂いがするな」
「あんた、甘いの好きだもんね。お砂糖は貴重品なんだってササヅカさんが嘆いてたよ」
「これは?」
「ココナッツオイルで作ったの。甘くて良い香りでしょ」
「ウム」
気持ち良さそうにネウロが目を閉じる。
「ヤコ、貴様と同じ香りだ」
頭皮を流して次は身体だ。また少しタオルに石鹸を馴染ませて背中を擦れば、真水に泡立ちネウロの肌を隠す。これで少しは目のやり場に困らない。
「さ、背中終わったよ」
「前も」
「それは自分でやれ!石鹸使わせてあげてるんだから!」
「チッ」
対して文句が出ないのはネウロが意外と石鹸を気に入ったからだろう。適当に擦って換えの水で流す気配がした。ヤコはベッドの影に回ってそちらを見ないようにしている。
「終わったぞ」
見ればさっぱりした様子でガウンに着替えていた。
「貴様は入らんのか」
「…一応年頃の娘に言う台詞か」
「流してやろう」
「それたわしじゃねーか!あんたがいたらどっちにしろ入れない!」
「…チッ。まぁ良い。久しぶりに我が輩気分が良い。下でワインを戴いてくる」
「…あ、うん」
「ああ、あと船でもその石鹸で我が輩の風呂の世話をしろ。ココナッツオイルなら市場で売っていたな。買ってやるから作れ」
「う、うん」
役目を命じられた事を嬉しそうにヤコは返事をした。
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