身の強張るような寒さを肌に感じ、暗い部屋の中で目を覚ました。

 汚れて紙切れ程に磨り減ったカーテン越しに忍び込む冷気に、耳の奥まで痛みが差し込む。
 明かりが無くとも呼気が白く立ち上がる様が頭の内に浮かんだ。
 狭い室内の壁際に押しやられたベッドは、壁の漆喰からパイプへと外気の冷たさが伝わっているかのようだった。

 暗がりに馴染んできた目に、色の揃わない毛布の重なりが映る。
 昨晩夜間の火の使用を止める代わりに、とドアの隙間から夜具を差し出してきた宿の女を思い出す。
 怯えた色は震えを差し出す腕にも現れていた。

 それを思い出したせいか、それともこの部屋の冷え込みのせいか感じた寒さにぶるりと震えが走る。
 いつの間にか上掛けからはみ出していた肩を擦り、外を窺おうとして窓枠に手を置き掛け、途中で思い直した。

 ベッドの上で片脇に寄せ集められた布の塊が身動ぎ、その中から微かに深く吐かれた息の音が漏れ聴こえる。
 昨夜相方の気紛れがこちらに都合良く転び、思いがけず得られた成果がそこで眠っていた。

 ほんの少し揺らいだカーテンに背を向け、あやふやな温もりの在処へと身を潜り込ませる。
 返り見ずとも、肩に染みる夜の寒さが夜明け間近のものと知っている。
 



       −続く−
 

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