単発文置き場

□割膝で明日をゆく
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 表の音に耳をそばだてつつ、部屋の脇の荷物を掴んで窓際まで寄る。
 薄く開けていた隙間から入る風に、硝薬の臭いが混じっていた。

「……つくづくアイツも間の悪い奴だな」

 窓枠に手を掛け、視界を開け放ちながらも呟きが口をついて溢れる。
 小脇に抱えた旅合羽の主は少し前、目処をつけた屋敷の様子見に行ったきりだ。

 今回ばかりは気長にやり過ぎたらしい。

 常ならば物静かに夜空に浮く月の失せた、火の手上がる先の煙る街並み目掛けて俺は身を踊らせた。
 
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