単発文置き場
□割膝で明日をゆく
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とある国に雇われ、乱戦の中あちこちと逃げ回る敵の首領を捜し出す任務について一月が経つ。
既に敗戦の色濃い敵方はその主の醜い所業に益々混乱を極め、陣地に入り込み情報を聞き出すのも雑作無いことだった。
至極まともな見てくれと生来の人当たりの良さを持つ相方は、こういう時に随分と役立ってくれる。
実戦ではさして役に立たない事を差し引いても、己にとっては有用な連れであった。
しかし、そんな時にこそ好事魔多し。
確実に目的の居所に近付き、あと一つ二つの確証を取って繋ぎを取ろうか、というところでアクシデントが起こった。
目的の潜伏していると思われる場所には、旧来から武家の家屋敷が軒を連ねている。
普段より物々しい雰囲気だと言うそこが、しばらくの内に慌ただしく人の出入りがあり、一層警護が厚くなったと耳に入っていた。
それが昨晩、突如として夜気を閃光が吹き払い、それに続く爆音が轟き、豪壮な屋敷の並びの大半が土石と廃材の山と化しのだ。
その音と光は武家屋敷から程離れた投宿先の旅籠をも襲い、飛来した破片に幾つもの窓がひび割れ砕け散る。
建物の何処かしらから悲鳴が聞こえ、どたどたと駆ける音がそれに続いた。
その間にも最初の時の爆発音と同程度のものが数回起こり、部屋内の照度を幾度も狂わせる。