単発文置き場

□暁過去編(仮題)
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 雨隠れの里、黒の塔へと参じた折り、鬼鮫は組織の長より一つの指令を下された。
 霧隠れを抜け真の主の命によって暁の一員となり、当代屈指の瞳術の使い手と謳われる、うちはイタチと共に任務をこなす日々の先の事である。

 驚異的な動体視力の補完を行う写輪眼と、非の打ち所の無い戦闘技術を兼ね備える年若い相方に彼は一目を置き、また口にすることはないが僅かに安堵していた。
 仮に相対する事となれば危険極まりの無いこの相手、罷り間違っても自らの手で始末する羽目にはならないだろう、と。
 里を捨てた大罪人となりはしたが、最早味方殺しの血で己の手を染める事はないのだ。

 他方、組織を同じくする者の内には常に外部へと出払い、各地を転戦しては他者へと売名工作を行っている者達がある。
 こなす任務の難度とは到底釣り合いの取れない請負報酬に、仲間同士でも殺伐としトラブルが絶えず、常にその面子は入れ替わりを繰り返しているという。
 大抵は、里にいられなくなったはみ出し者が行き場と食い扶持を求めるか、または這い上がる機会を窺う場として集って来るのであろう。
 昨今では彼ら烏合の衆の間にもそれなりの手練れが入り交じるようになり、組織の一戦力としても有用に機能するようになってきたと聞いていた。

 そして今回、転戦部隊に潜ませていた監視者から一部の者達に離脱の動きあり、との密告が入り事態の迅速な収拾へと動く指示が言い渡されたのであった。


「これも組織の為と言う事ですか……分かりました、あまり戦力を削らない程度に説得して差し上げますよ」
 
 
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