単発文置き場

□暁過去編(仮題)
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 五大国間の密約により、近年は国一つの存亡を懸けるような大戦は阻止され続けてきた。
 しかし大国間の協定領域より外、侍の治める鋼の国を除いた勢力圏では諸国数多とひしめき合い、また外海より渡り来る異国使節からの干渉も一帯の混乱に拍車を掛けている。

 遥か昔、六道を操る仙族はその強大な力を恐れる人々から身を潜める為、平穏に過ごせる土地を求め未開の地へ分け入ったとの諸説あり。
 忍の技とは無縁の遠国に住まう民人は蒸気船に乗り、より豊かな土地を廻って資産を蓄え、非力を補う鉄の兵器をその武器庫に積み上げるようになったという。
 だがその世界の有り様は国政を司るごく一部の者達のみが知るものであり、忍里に舶来品がこの昨今出回るようになった他は、周辺の住民達は未だ旧時代の暮らしに疑問すら抱かずに過ごしている。
 故に国使たる者の迂闊な振る舞いへの自戒は言うに及ばず、抜け忍などが忍界の内情を外界へと持ち出す事は固く禁じられ、反すれば容赦無く死の裁断が下された。

 暁の首領も現段階では組織の地を固める事を最優先させる方針であり、初手である周囲勢力からの信用を得る為には細心の注意を各指揮者へと促していた。
 だが今回の事態はあろうことかその指揮者自らが企てたものである。
 恐らくは即戦力ともなる腹を割った同士と示し合わせ、法外な報酬とより良い待遇を求め、持ちたる秘匿事項を餌に外部へと売り込むという魂胆であろう。
 そういった造反の懸念のある部位には『眼』となる者が必ず送り込まれ、長年の歳月を掛け地中に拡げられた信号網により適宜経過が報告されている。

 現在部隊は雨と砂の国境を越えた紛争地域へと、先に下された作戦指示に添い移動を続けているの確認し、暁の追手は止まぬ雨の中旅立って行った。
 
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