☆★続・Rebel★☆

□Mazed Blue
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ケロロ君と言葉を交わさなくな
って何日たったのだろう――

そんなことを思いながら、僕は
一般コースの野外訓練である、
断崖登降訓練の順番を待ってい
た。
アサシンコースを選択している
僕にとっては今更参加する必要
もない訓練だけど、高等訓練所
の一年目は一般コースの演習免
除は認められていないので、参
加するしかない。どちらにしろ
免除されたところで自由な時間
が与えられるわけではなく、ア
サシン専門の新しい訓練が課さ
れるだけなので状況は特にかわ
らない。僕達訓練生はただ言わ
れるまま訓練をこなすしかない。









今日は朝から酷く頭が重い気が
した。体もだるく、吐き気がす
る。病弱だった小さい頃みたい
な感じだ。
あの頃なら間違いなく母が訓練
所を休ませただろうけど、生憎
全訓練生が寮生活である高等部
に所属する今は体調は全て自己
管理だ。
そして日々行われる訓練は1日
休めば皆に大きな遅れをとり、
こと僕の所属するアサシンコー
スにおいてはその差は歴然とな
る。



行かなくちゃ……

そう思って出てきはしたけど



こうしてただ順番を待って立っ
ているだけでも、嫌な汗が吹き
出てくる。喉元は酸っぱい何か
がせり上がってきて、吐き気を
噛み殺すのがやっとだった。






これもあの時の罰なのかな……







そんな思いが僕の頭に浮かぶ。





いや、これぐらいで……



この程度で……



僕の犯した罪が
赦されるわけがない





ぐらつく僕の脳裏に決して消え
ることのないあの時の記憶が鮮
明に蘇る。




あの日




あの時





僕が抑えられなかった衝動――





どうしてあんなことを
してしまったのか






どんなに悔やんでも
元に戻すことはできない






僕が自ら壊した硝子の思いは
粉々に砕け散って
僕の胸を突き刺した






自分の思いをぶつけてしまった






君への思いを抑えられなかった












そして僕の中で
眠っていた狂気は









最低な方法で
君を傷つけて―――











全てが終わってしまってから
自分の犯した罪の大きさに
恐れ慄いて









目覚めて

僕を蔑むわけでもなく

黙って立ち去ろうとする君に

声もかけられず――








そして







きっと








僕は……











永遠に君を失ってしまった















指導教官が僕の名を呼んだ。
僕の順番がきたらしい。
体に訓練行動がしみついている
のか、ほとんど無意識に僕は走
り出し、崖上から下がるロープ
を掴むと壁面を登り始めた。







頭が痛い


目が霞む――











いつもならば造作もない訓練な
のに、今はロープで体を支えて
ることすら危うい。







息が苦しい――


頭がぐらぐらする







視界が大きく歪んで、ロープを
握る力が抜けた。






ぐらっ







体が大きく傾く。
僕をつなぎ止めるはずの手は
その役割を放棄して







僕は―――




落ちた。












体は宙に浮かんだかと思うと凄
いスピードで地面へと向かう。
人は落ちるとこんな感じなんだ
な――と、僕は妙に冷静に自分
が落下する状況を感じていた。
だけど体勢をととのえる余裕も
気力も今の僕にはない。









もう、いいや








頭に浮かぶのはそんな言葉――









幼き日のあの時
止まらないブランコから
宙返りして飛び降りた僕に
君は
頬を紅潮させて
興奮しながら
嬉しそうに笑って――





「すげぇよっ!
 お前絶対
 アサシンになれるよ!」





そう、言ったんだ……





だから僕は



その日から



どんなことがあっても
アサシンになるんだって
心に誓って――







それなのに

それなのに







僕は――








君がいなければ





君を失ってしまった今では――





何のために
アサシンになるのか――





わからなくなってしまった





何もかも色褪せて




息をすることすら
バカバカしい……








ごめんね
ケロロ君……








ホントはちゃんと
謝らなくちゃいけなかったのに





君にあんなことを
しておきながら……



意気地なしな僕で
ごめんなさい











「ゼロロッ!」







僕の名を呼ぶ声がして
視界が緑に染まる




そして
思ったよりも
小さな衝撃とともに







僕の意識は途切れた――





(...to be continued『Mazed Greenへ』)














 

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