★短2★

□君のためなら(仔G66&K66)
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『君のためなら…』(GiK)




「うぇっぷ……」
「ケロロ?」
「ケロロ君?」


訓練所での休み時間――

ケロロは唐突に緑の手で口を覆
うと、教室から飛び出した。
その後ろ姿を赤いおたまと青い
おたまはあっけにとられて見送
る。
ややしばらくして、げそりと青
い顔をさせたケロロが教室へと
戻ってきた。


「あ〜……」
「大丈夫?ケロロ君」
「どうしたんだ?」
「うーん……わかんね……
 なんか急に気持ち悪く……
 うぇっ!」


再びケロロは口を押さえ駆け出
す。残された二人は顔を見合わ
せ、肩をすくめた。






「ほんとに大丈夫なの?
 ケロロ君」
「大丈夫じゃね……うー……」


心配そうに尋ねる青いおたまに
対して、ケロロはうつぶせたま
ま小声で呟く。

赤いオタマはというと――
目の前にいる緑のオタマが心配
でしょうがないのではあるが、
どうしたらよいのかわからず、
ただひたすらオタオタとしてい
た。


「ケロロ……ほんとに……」
「あ!」

ギロロの言葉を遮るように声を
あげ、ケロロは跳ね起きて言っ
た。

「ゼロロさぁ〜
 ものすげ酸っぱい
 のど飴持ってなかったぁ?」
「あ…あぁ、あるけど……」
「ちょーだい」

もともと喘息の気があるゼロロ
はちょっとしたことで咳き込む
のでいつものど飴を持ち歩いて
いる。
通学鞄の中から小袋をとり出
すと、ゼロロはケロロに差し
出す。

「でもこれ酸っぱ過ぎて
 マズいってケロロ君
 言ってなかったっけ……?」
「う……ん
 なんか酸っぱいもん
 食べたくってさぁ〜……」

ケロロは袋から飴を取り出し口
の中に放り込むと「ンまい……
」と呟き、再び机にうつぶせた


「ケロロ、保健室に行った方が
 いいんじゃないのか?」

ギロロの言葉にケロロはチラリ
と目だけ向ける。

「ギロロ……
 連れてってくれんの?」
「ああ」
「んじゃ……抱っこ」

甘えたような声でケロロはギロ
ロに向けて両手を広げる。

「バカ、お前さっき
 自分で歩けてただろ!」
「なんだよ〜……ケチ」

溜息をつきながらケロロは椅子
からガタリと立ち上がる。やや
ふらついているケロロの腕をと
るとギロロは自分の肩に回し支
えてやる。

本当は弱っているケロロを保健
室までおぶってやってもいい、
抱いていってもいい。体力には
自信のあるギロロにとってはわ
けないことでもあるのだが……
自分とケロロの関係を考えると
人前ではなんだかまずいような
気がして若いオタマは妙な躊躇
いを覚えてしまっていた。おど
おどとみている青い友人のほう
を振り返り声をかける。

「じゃあ、オレ
 ちょっとこいつを
 連れて行ってくる」
「ギロロ君、一人で大丈夫?
 僕も一緒にいこうか?」
「大丈夫だ」

そういうとケロロを連れてギロロは教室を出て行った。




保健室で保健担当教官にケロロ
を預け、ギロロは教室に戻って
きた。教室で待っていたゼロロ
はすぐさま尋ねてくる。

「ケロロ君、大丈夫そう?」
「ああ、すぐ寝ちゃったよ」
「そう、大したことなかったら
 良いけど……
 なんか、さっきの
 ケロロ君たら……」

ゼロロが言いかけた言葉を切っ
て小さく笑ったので、ギロロは
訝しげにゼロロのほうを向いた


「さっきのケロロが
 なんなんだ?」
「いや、あの……なんか
 妊娠してる人みたいだなぁ…
 …と思っちゃって」

ゼロロの言葉にギロロは大声を
張り上げる。

「はああああああ????」

いきなりギロロが発した奇声と
それに反応して一斉に振り返っ
た教室中の視線にゼロロはドギ
マギしながらギロロの方をみる
と赤いオタマは口をあんぐりと
開けたまま固まっていた。

「ど、どうしたの、ギロロ君」
「ゼロロ…妊娠すると
あんなふうになるというのは
本当か?」
「あ、ああ……
気持ち悪くなるのは
悪阻っていうんだって。
うちのお母様も
弟ができたとき
あんな感じで…
酸っぱいもの食べたいって
言ってたし……」

ギロロの口はアゴがはずれたか
のように、さらに大きく開き、
空気を求める魚のように口をパ
クパクとさせていた。


妊娠……
妊娠……

おぼえは…………
ものスゴクある
あってしまうのだ、確実に!!


――だあぁぁぁ……!!


「…………って言っても
ケロロ君は…………だし、
そんなことありえないよね
お腹でも壊したのかな……」

青いオタマの言葉など、もうす
っかり耳には入っていないギロ
ロは譫言のようになにやら呟き
ながら、椅子にへたり込んだ。






ケロロは保健室からそのまま帰
ってしまったらしい。担任教官
がケロロの荷物をとりにきて運
んで行った。

放課後になっても、ギロロは心
ここにあらずな状態で、ただゼ
ロロに促されるままに帰宅した
のだった。


兄と兼用の自室にてカバンを置
くとベッドに横たわり大きく溜
息をつく。



はあ……
オレはどうしたら……


父は烈火のごとく怒るだろう、
勘当されるかもしれない。
そしてケロロの父……
いわずとしれた鬼軍曹として
有名なあの人……



オレ、殺されるかも……



顔を青ざめさせながら、ギロロ
はふと自分の寝転がっているベ
ッドをみつめた。


ケロロ……


このベッドで……
オレはお前を……



つい数日前にここでケロロを抱
いたときの光景がギロロの脳裏
にまざまざと思い出される。



『…………好…き……
 ギロロ……大好き…………』



自分の下で喘ぎながらケロロは
何度もそう言った――



違う!!
俺が悩まなくちゃいけないのは
こんなことじゃないんだ!



ギロロはがばっと跳ね起きた。

自分のしたことには責任を
もたなくちゃいけない

そうだろ、ギロロ、
お前は男として
責任を取らなくちゃ
いけないんだ!



ギロロはベッドから飛び降り部
屋を出ると、階段を駆け下りて
家を飛び出した。






ギロロが一目散に走りついた場
所――
ケロロの家の前だった。

体調の悪いケロロは
もしかしたら寝ているかも
しれない

だけど
だけど

これは伝えなければ
いけないんだ――



息を吸い込み、やや震えながら
インターホンを押すとケロロの
母の声がした。

「あ、あの……
 ケロロいますか?」

ケロロの母がケロロを呼ぶ声が
する。ほどなくして玄関があく
とケロロがぴょこりと顔を出し
た。

「どったの?ギロロ」
「け、ケロロ……
 大丈夫なのか?」
「うん、も、ダイジョブみて」
「そうか」

そういうと黙ってしまったギロ
ロの顔をケロロは覗きこんでケ
ロケロと笑う。

「なに、心配して
 きてくれたの?」
「あ、いや……その……
 ケロロ……その……
 話があるんだ……」
「は…あ……何?」

玄関から顔を出していたケロロ
は外に出てくると、持っていた
ドアを離した。ドアはパタリと
閉まって中とは遮断される。

「何だよ、話って」
「あ、あの……オレ……
 ちゃんと責任とるから!」
「は?」

唐突なギロロの発言にケロロは
目をぱちくりさせる。

「お、オレ……
 まだ訓練生だけど……
 いざとなったら訓練所やめて
 宇宙マグロ漁船にのって
 稼ぐから!
 ちゃんとお前と子供を
 守るから!だから……!!」

一気にまくし立て、感極まり言
葉を詰まらせるギロロをケロロ
は呆然とみつめる。

「あの……子供って……」
「……お前気分悪そうに
 してたし、酸っぱいもの
 食べたがるし……
 妊娠してる人みたいだって、
 ゼロロが……」

頭から湯気が出そうな勢いのギ
ロロをケロロはしげしげとみて
息をつく。

「あの……さ、ギロロ……」
「お、おう!なんだ?」
「……その……おまぃ……
 ものっそ根本的なとこ
 間違ってね?」
「え?」
「……オレ……『男』だよ」
「・・・・・・・・」

赤いオタマは真っ白に固まる。


は……
そうだった
ケロロは
ケロロは
『男の子』だった
『♂』だった
妊娠するわけないじゃないか〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!

オレ…
オレは今……
ものすごくハズカシイことを言ってしまったんじゃないのかぁ〜〜〜っ!!!



「気持ち悪かったのは
 今日母ちゃんが弁当に
 古いかまぼこ入れちゃった
 って言ってたから、
 多分そのせいだし……」





ひいぃ……
オレのバカっ!バカ!バカ!





頭を抱えて今にも泣きだしそう
なギロロを見て、ケロロは吹き
出し、げらげらと笑い出す。

「なっ!ぬわ〜にが
 おかしいっ!!」

ほぼ逆ギレな状態でギロロは叫
んだ。

「宇宙マグロ漁船
 乗ってくれんの?
 じゃ、ガンプラいっぱい
 買って貰おっかな〜」
「誰が乗るかぁっ!!」
「すげ似合いそだぜ、漁師
 ほんとになってみたら?」
「なるかぁっ!!」



チクショ……
ゼロロがあんなこというから…




何気ない青い幼馴染の一言を逆
恨みせずにはいられないギロロ
だった。

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