★短2★

□Celebrate(GLL&K66)
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『Celebrate』(GLL&K66)


いわゆる結婚式――と呼べるよ
うな仰々しい形式はとらないで
紫蛙と緑蛙はケロンの丘に聳え
る小さな教会で二人きりで誓い
を立てた、静かに厳かに――




そうして新居を構えた妻の任務
遂行地に戻ると部下とはいえ、
気のおけない仲間達――そのう
ち一人は夫の肉親であり、妻の
親友でもある――は全くのサプ
ライズでささやかながら二人の
門出を祝うパーティーを開いて
くれた。
勿論ペコポンにおいて親しくな
った人達も招待されており、皆
に祝われながら、二人は陽気で
楽しい一時を過ごした。

最後には酒の匂いだけで出来上
がってしまった紫蛙の赤い弟は
男泣きに泣いて、大号泣の末、
二人の肩をバンバン叩いたかと
思うと「兄ちゃんを……ケロロ
を頼む!」と大声で叫んで、糸
が切れたようにパタリと倒れ眠
ってしまった。苦笑しながらも
兄の金色の目にはキラリと光る
ものがあり、親友の大きな黒い
瞳は涙で溢れた。
それぞれの思いを胸に宴はお開
きとなり皆に見送られながら新
郎と新婦はパーティー会場を後
にした。






二人で基地内にある新居へと向
かう。黄色曹長が侵入できない
ように、玄関には電子制御のき
かないホグワツ星から取り寄せ
た呪文を唱えるタイプのマジッ
クロックを新居が完成した際に
夫がとりつけていた。

「根は決して
悪いヤツではないんで
ありますが……」

悪趣味なことは確かであります
、と鍵をとりつける夫の背後で
妻が苦笑すると夫は「それはわ
かっているよ」と微笑んだ。




二人同時に呪文を唱えるとカチ
ャリと音がしてドアが開いた。
中に入り電気をつけるとまだあ
まり生活感の感じられない空間
が広がる、が、そこには二人で
選んだ真新しい家具が並んでい
て、明日の朝から使うであろう
ペアの食器類が目に飛び込むと
妻の顔は自然と綻んだ。






――今日から二人きり……

――なんだか少しテレちゃうであります……



緑の妻は頬を赤らめ俯き、紫の
夫におずおずと声をかけた。


「あ、あの……中尉……」

「なんだい?」

「ちょっと座ってであります」


緑蛙に促され、紫の蛙が腰をお
ろすと、妻が目の前できっちり
と正座をしたので、合わせて夫
も正座をした。


「あのね……中尉……」

緑の妻は小さく深呼吸をすると
両手をついて深々と頭を下げて
言った。



「ふつつかものですが…
よろしくお願いします
であります」




妻の口から発せられた言葉に、
紫の夫の胸には熱いものがこみ
上げてくる。


――愛おしい……


この感情にこれほどそぐわう言
葉があるだろうか?

今すぐキラキラした漆黒の瞳で
自分をみつめるこの人を抱きし
めたい――
が、感情抑制の訓練のできてい
る夫は押し溢れる気持ちを名残
惜し気にその想いを飲み込むと
少し息を吸って、妻のように頭
を下げた。


「私の方こそ、
 宜しく頼むよ……
 ケロロく……いや…ケロロ」



妻は顔を上げ今日夫になった男
をみつめるとさらに頬を染めて
「エヘヘ…」と笑った。紫の手
がほんのり色付いた緑の頬に触
れ、そのまま抱き寄せられる。
何よりも安らげるその腕の中で
妻は目を瞑りほおっと息をつい
た。胸の中で息づく温かさを夫
はさらに力強く抱き締め、その
瞼に口付けた。



「中尉……」


今日が初めてというわけでもな
いのに、あの時のように、いや
それ以上に胸は狂おしさに溢れ
てくる。

君がこの胸に飛び込んできてく
れたあの日のように――


愛しい人

愛しい人

今日からは

もうこの手を
離さなくてもいいのだな――




「中尉……我輩……」


言いかけた言葉は塞がれた唇の
中へ消えていく。ほんの一瞬触
れ合った後、夫は金色の目を細
めて少し嗜めるような口調で言
った。



「君は私の名を
 知らなかったかな?」



吐く息の熱さが感じられる距離
のまま、ケロロははにかみなが
ら今までは呼んだことのない呼
び方で夫の名を呟く。



「ガルル……」

「ガルル……我輩の……
 宇宙で一番大切な人
 であります……」


紫の夫は微笑むと「先に言われ
てしまったな」と言い、再び唇
を妻のそれに重ね合わせた。




大好き

大好き

ガルル……

こんな日がくるなんて
思ってなかったであります


次第に口付けは深くなり――




今日からは
ずっと二人で……







重なり合う二つの影はその喜びを噛み締めあいながらいつまでも離れることはなかった。
 

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