★長★

□Time after time【最終章】
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地下基地内にある不自然な空間
はこの数ヶ月の間、誰が立ち入
るわけでもなかったが、特にか
わった様子もなく何もないまま
そこに放置されていた。
ケロロ達が今日やってくるとい
う新メンバーの来訪を今か今か
とポートで待ち構えている頃、
暗い空間にはじわじわと次元の
歪みがうまれ、瞬く間にケロン
人ならば余裕で通れるほどのワ
ープホールが現れた。ほどなく
してそのブラックホールの中に
鮮やかなオレンジ色の点が見え
たかと思うと気だるそうな黄色
い手がにゅっと飛び出てきた。


「クークックックッ……」


ヘッドホンからシャカシャカと
音を流しながら、分厚い瓶底メ
ガネを押さえ黄色い蛙が穴から
這い出てくる。


「俺様、参上……てかぁ」



へらりとした表情で黄蛙は小型
のノートパソコンを操作して始
めるが、ふと手を止め、小さく
息を吸い込むと、口の端を上げ
「ククッ」と笑った。


「お出迎えに
きてくれたのかい?
ドロロ先輩」


黄色いケロン人はパソコンのデ
ィスプレイから目を反らさずに
徐に語りかける。するとキーボ
ードを打つカタカタという音の
中に『シュッ!』という音が混
じり、黄蛙の背後に青い影が現
れた。


「クルル殿はアサシンにも
なれるのではござらんか?」



青いケロン人のアサシンはフワ
リと笑って言った。


「御免だぜぇ〜、
体使うのは面倒だしなぁ」



ニヤニヤと笑いながらクルルは
パソコンを打ち続ける。一般人
には解読不能の奇怪な文字列が
ディスプレイの中で途切れ、En
terキーが押されると音もなく
ワープホールが消え、替わりに
現れた真っ黄色な建物はなかっ
たことが夢であったかのように
その存在自体を主張した。


「クックーッ……」


こともなげに自分のラボを再建
するクルルにドロロは静かに話
しかける。


「本部からの連絡では
上層部数名と大型の宇宙艇で
来航するとのことであった故
隊長殿達はあちらで
待機してるでござるよ」


「ふーん」


「他の方々は
来ないことになったんで
ござるか?」


「さあな
面倒くせーから
途中で俺はこっちに
次元移動したし……
操縦士いねーけど、
運が良かったら
これるんじゃね?
しらねーよ」


「そんな!!
運が良かったらって!」



踵を返し、急いで立ち去ろうと
した青蛙に黄蛙はへらへらと笑
いながら言う。


「ククッ……
奴らもバカじゃねーから
路頭に迷ったりはしねーよ」



ドロロは振り返りながらふっと
溜息をつく。



「相変わらずでござるな……
クルル殿は……」



「けっ……
善人ズラしてんじゃねーよ、
先輩……
人の出世話ぶち壊して
おきながらなぁ」



再びキーボードからなにやら打
ち込みながら、クルルは「クッ
クック……」と笑う。


「どうやって
手ぇ回しやがった?」



本人の顔のようなラボの外観が
息を吹き返したように動き始める。元に戻っていくラボの様を
みつめながらドロロは微笑んで
答えた。


「諜報活動は
拙者の得意分野ござるよ」


黄蛙は肩をすくめて小刻みに笑
いながら「そりゃそうだな」
と呟いた。そりゃ、アサシンの
一番基本的な活動分野だと――
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