Novel

□hope
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(2)

「おー、茶和。久しぶりじゃん!」



識は私の姿を捉えると優しく微笑みながら話し掛けてきた。
「エヘへ。」と笑いかけながら識に近ずく。







相変わらず綺麗な顔。それに似合うさらさらの茶色がかかった髪。
ジ〜っと織を見ていると彼が「ぷっ」とふきだした。
「何人の顔凝視してんの?」
識にそう言われて慌てて顔をそらした。顔が熱い。
「しゅ、収録終わったの・・・?」
識の顔に見とれていたのが恥ずかしくて話をそらす。
「ああ・・・。もうすぐ新曲発売だからみんな多忙しで・・・・・。」
「へー・・・。」



・・・確かに、みんな忙しそうだ。



どれもこれも織のため・・・。









織は年代をとわず人気を集めている‘SIKI’として歌手をしている。
外見、歌声に誰もが魅了され、独特な歌詞にも目を引かれている。
・・・・・歌詞?


「あ!そうだ!!」


いきなりそう叫んだので隣にいた織がびくっとはねた。
「な、何?いきなり・・・。」
「え?あはは、ごめん。織に渡す物があったの忘れてた・・・。」
そうだ、今日はこれを渡すために水姫ちゃんのお誘いを断ってまで来たんだ。
水姫ちゃん、今度お詫びしなきゃ・・・・・。
そんなことを思いながら織にある紙を渡した。

「はい、これ・・・。次の曲の詩・・・・・。」
「おー。サンキュ。」
そう、織の人気を集めている1つの歌詞は、実は、この私が書いているの。











織に会ったのは2年前。
生まれつき体が弱い私は生きることに絶望を感じていた。
そんな時に織に会った。彼は私に生きる希望をくれた。
それ以来私は織のために詩を書いている。







私の唯一の生きがい――――――――――。
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