オハナシ

□ホワイトデーまであと何日・・・
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ホワイトデーまであと5日

『今日は寒いねえ・・・』
はう〜、さくらのピンク色の傘がくるくると回る。


3月だというのにみぞれがちらつく帰り道、オレはさくらの隣りを歩きながら彼女の横顔をちらりと盗み見した。

ほお・・・
さくらが手を温めようと息をはくと、白い雲がふわりと浮かび上がる。
その白さに翡翠色の瞳が映えていて、オレはその色から目が離せない。

・・・きれいだ、純粋にそう思う。

ひさしぶりに一緒に帰れたのは、今日から期末テストだからであった。

今日はクラブもない、
自分達を煩わせる用事もない、
わずかな時間をいとおしむ様に、少しスピードを落として帰路を歩く。

『・・・小狼くん、今日の家庭科のテスト、どうだった?』
小さな傘からさくらが顔を覗かせた途端、オレの心臓が音を立てる。

盗み見していたバツの悪さから、オレは目をそらした。

『あ、ああ・・・』

『・・・カロリー計算って、数学みたいだよね・・・、』
はう〜っと、さくらは眉を下げる。

『ああ、そうだな、』
オレは少し上の空でさくらの話に相槌を打つ。

・・・それもそのはず、だ。
オレの頭の中はカロリー計算と同じように数字が飛び交っていた。

◆◇◆◇◆
・・・ホワイトデーのお返しは、手作りのお菓子にしよう、
そう決めたのはほんの少し前だった。

『はう〜、利佳ちゃんの作ったクッキー、おいしいね♪』
弱い日差しがそそぐ中庭で、さくら達いつものメンバーが佐々木の作ったクッキーに舌鼓を打つ。

そう、いつもの昼休み―
お弁当のフタを閉めたオレは、そのクッキーを1つ口に運んだ。

『ほんと、利佳ちゃんってお料理上手だね!』

『うんうん♪』

『・・・そんなことないわ。』

佐々木が恥ずかしそうにうつむいた。

『・・・そういえば、さくらちゃんの好きなお菓子ってなあに?』

『ほえ?』

桜色の頬にクッキーのかけらをつけたままのさくらが、佐々木の方を見て小首をかしげた。

ドキっ
いつものような胸の高鳴りを覚える。

・・・耳がダンボになっていくのがわかる、
オレは全神経を耳に集中させて、さくらがなんと答えるのか、知らん振りしてその言葉を待った。

さくらの、好きなお菓子・・・って?

『ほえ?わたしの?』

『そう、今度作るわ♪』

やった〜っ!さくらが両手を挙げて喜ぶ。

『私の好きなお菓子はね・・・』

息を止めて次の言葉を待つ。
そんな話題興味ないって格好つけながら。

―少し身体がさくらの方へ傾いた時、

『李君、クッキーといえばね、』

『うわああっ!?な、なんだ!?』

隣りにいた山崎がタイミング悪く声をかけた。

どきどきどきどき
まるで盗み聞きを見透かされたような気がして。

オレは身体がビクンと飛び上がる。

『どうしたの?』

分かっているかどうか伺い知ることも出来ないくらい細い目の友人が、人差し指を出したままオレに訊ねた。

『いや、何でも・・・ない、』

『・・・そう?』

ちらり、さくらのほうに意識を向ける。

が―

『・・・そうなんだあ〜、じゃ今度作るね♪』

『うん♪ありがと、利佳ちゃんっ』

ああ、
重要な部分を聞き逃してしまった。

はあ〜、オレの肩から力が抜けていった。


明日に続く
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