オハナシ

□New Year 2010
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『今年最初のお願い』

数学の成績が上がりますように

お料理がもっと上手になりますように

遅刻しませんように

それから、
チア部の全国大会出場!

あとは…
今年も家族みんなが元気で、雪兎さんや知世ちゃんとたくさん遊べますようにー…

ちょっとお願いすることが多いかな?

わたしは手に握りしめたた5円玉を、使い込まれた賽銭箱にそっと投げ入れた。

チャリン…
銅の澄んだ音が響く。
神様がわたしの欲張りなお願いごとを、まあ聞いてあげようかと返事をしたようだった。

がらがらと鈴を鳴らし、深呼吸して拝殿に向かう。

―そのわたしの横には…

頭一個分は大きいだろう、
…彼はいつものように背筋をきちんと伸ばし清々しい柏手を打つと、
その吸い込まれそうなくらい澄んだ瞳を伏せ、今年最初の祈りを捧げていた。

その姿があまりにも神々しくて…
合わせた手の横から、ちらり盗み見したわたしは、胸の奥がきゅんと鳴った。

(小狼くん、冬休みの間にまた大きくなったな、)

冬休みに入ってから香港に帰っちゃった小狼くん、
ほんのちょっと会えなかっただけで、まるで別人のように大人びてしまうから…

―会うたびに、ドキドキして胸が苦しくなる。

わたしの心臓、どうにかなっちゃうよ、

久しぶりに見た小狼くん、長い指先をきっちりと合わせ頭を垂れる姿から目が離せない。

(あ、お願いごと!

えっと、神様…

数学の成績が上がりますように、

お料理がもっと上手になりますように、

遅刻しませんように、

それから、
チア部の全国大会出場できますように、

今年も家族みんなが元気で、雪兎さんや知世ちゃんとたくさん遊べますように…)

ちらり、わたしはもう一度小狼くんの横顔を盗み見して、

(…それから、

今年も小狼くんと…

ずっと一緒に…)

『…さくら、行くぞ、おみくじ引くんだろ、』

はぐれないようにと、
小狼くんがぶっきらぼうにわたしの手首を掴んだ。

『あ、うんっ!』

わたしは頬が火照っていくのを感じながら、風をきる背中をあわてて追う。
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